BKポリオーマウイルス腎症5例の病理組織学的検討

市立札幌病院 病理科
* 小川 弥生、田中  敏、高田 明生、武内 利直
市立札幌病院 腎移植科
原田  浩、平野 哲夫
市立札幌病院 泌尿器科
三浦 正義

【目的】BKポリオーマウイルス腎症(BKPVN)では、病理組織学的に尿細管間質性腎炎および尿細管上皮の変性、核内封入体などの所見を認め、抗SV40T抗体を用いた免疫組織染色で尿細管上皮細胞の核に陽性所見が見られる。
形態学的に尿細管炎が目立つ場合は、急性拒絶との鑑別が困難な場合も少なくない。
今回われわれは、当科で経験した5例のBKPVN症例について、病理組織学的所見を中心に検討するので報告する。
【対象】当院腎移植科通院中の移植腎症例のうち、尿中decoy細胞陽性で、かつ腎生検組織により尿細管上皮細胞の核にSV40Tagが陽性所見を示したBKPVN5例を対象とした。
【結果と考察】症例は男性3例、女性2例で、移植時年齢は平均38.3歳(15-62)、生体腎移植4例、渡航移植1例であった。
免疫抑制剤は5例ともTAC,MMF,PRであった。
病理組織学的なBKPVN診断時期は術後平均164.4日(85-215)であった。
BKPVN診断前に急性拒絶で治療された症例は1例であった。
診断時血清クレアチニン値は平均1.56mg/dl(1.0-2.1)であった。
BKVウイルス定量(PCR法)は5例中4例に行い、尿中BKVは4例とも1x1077コピー/ml以上であった。
血中BKV が1.0x104コピー/ml以上の症例は1例のみであった。
病理組織学的には、i1-2相当の領域にリンパ球と形質細胞を主体とする単核球浸潤(図1)と、t1-2相当の尿細管炎を伴っていた。
皮髄領域がともに採取されていた生検組織は3/5例で、3例は皮髄にわたり炎症細胞浸潤を認めた。
尿細管上皮細胞の一部は核が腫大し、またところどころ内腔へ剥離しており、尿細管上皮細胞の変性が、生検組織の10%未満は2例、10-25%は3例であった。
尿細管上皮細胞にはfull型の核内封入体(図2)を一部に認めた。
SV40TAg抗体を用いた免疫組織染色では、尿細管断面平均9断面(6-11)において、上皮細胞の核に陽性所見(図3)を認めた。
急性拒絶反応との鑑別点として、臨床的なクレアチニン値の推移と病理組織学的所見の乖離、尿細管上皮変性所見が急性拒絶反応との鑑別に参考となるが、尿細管炎が目立つ症例は急性拒絶反応の合併との鑑別が難しいと考えられた。


戻 る  ページの先頭