生体腎移植後早期の移植腎生検にて慢性抗体関連型拒絶反応と診断した1例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 清水 朋一、石田 英樹、崔 啓子、田邉 起、白川 浩希、田邉 一成
東京女子医科大学 第2病理
本田 一穂
聖マリアンナ医科大学 病理
小池 淳樹

 生体腎移植後早期の移植腎生検にて慢性抗体関連型拒絶反応(chronic antibody-mediated rejection: c-AMR)と 診断した1例を経験した。
 症例は45歳女性。1994年7月母親をドナーに生体腎移植施行した。2008年2月透析再導入。今回弟をドナー とした生体腎移植を2009年9月に施行した。移植前のCDCクロスマッチ(XM)は陰性であった。フローサイトメ トリークロスマッチ(FCMX)はT cell陰性で、B cellは一旦は陽性であったが、移植前の再検査では陰性であった。 Luminex法による抗ドナー抗体(DSA)は陰性であった。免疫抑制はtacrolimus(TAC)、mycophenolate mofetil (MMF)、methylprednisolone(MP)、basiliximabとrituximab 200mgとした。腎移植術中、再還流直後は移植腎 の状態は良好であったが、10分後移植腎はまだらに紫色に変色した。Hyperacute AMRと診断し、γグロブリン (γ-glb)投与とMP計1.5g投与した。その後腎臓の色調は再還流直後と同じようになったため、手術は終了した。 尿量は保たれていたが、移植翌日から除々に尿量減少したため、rituximab 300mg追加投与し、血漿交換とγ-glb 投与した。乏尿となりしばらく透析を施行していた。移植後19日の移植腎生検では、1. Transplant glomerulitis, moderate. 2. Peritubular capillaritis, diffuse and moderate. でC4dはprtitubular capillary(PTC)で陽性であり、 移植後40日目のLuminex法によるDSAは陽性となっていたためacute-AMRと診断した。生検の結果を受けてMP 500mg投与とγ-glb追加投与した。その後尿量は除々に増加し、移植後32日で透析離脱した。血中クレアチニ ン(s-Cr)も移植後38日で1.19mg/dLまで下降した。移植後49日目に施行した移植腎生検では、1. Transplant glomerulopathy, moderate with transplant glomerulitis, severe. 2. Peritubular capillaritis, diffuse and moderate. でC4dはPTCで陽性であり、移植後61日目のLuminex法によるDSAは陽性となっていたため c-AMRと診断した。 その後は多少の蛋白尿はあるもののs-Crは0.9mg/dLで移植腎機能は安定している。
 これほど早期での慢性抗体関連型拒絶反応の経験は珍しいので症例を提示した。


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