早期に再発しグラフト機能不全に到った単クローン性IgG沈着型増殖性腎炎の1移植例

東京女子医科大学 第四内科
* 川西 邦夫、新田 孝作
東京女子医科大学 第二病理
本田 一穂
東京女子医科大学 腎センター 病理検査室
堀田 茂
東京女子医科大学 泌尿器科
清水 朋一、田邉 一成
山口病理組織研究所
山口 裕

 症例は56歳男性。1993年春(55歳時)の健診ではじめて、高血圧を指摘され、近医でカプトリルが開始された。同年10月ごろより下腿浮腫が出現し、次第に増悪したため、同年11月、近医を受診したところ、ネフローゼ症候群を疑われ、当科紹介、12月に当科入院となった。尿蛋白5.65g/day、TP 4.7g/dL、Alb 2.6g/dLよりネフローゼ 症候群、腎生検によりMPGNと診断した。プレドニゾロン60mg/dayで治療を開始し、40mg/dayまで減量後、退院とし、外来で経過を見ていた。退院後半年ほどで、浮腫増悪、尿量低下あり、シクロフォスファミド50mg/dayを追加するも、腎機能障害が進行し、1994年10月、血液透析を導入した。1995年6月、弟をドナーに生体腎移植を施行(B→B)し、Cr1.5mg/dLで退院となったが、移植後25日目にCrの上昇を認めたため、当院泌尿器科入院となり、ステロイドパルス療法、OKT3療法を施行後に移植腎生検を行ったところ、明らかな拒絶の所見はなく、免疫組織学的所見からMPGNの再発と診断した。その後、免疫抑制剤の調整を行うも、次第に移植腎機能障害が進行し、移植後約半年で血液透析再導入となった。本症例は移植後早期に再発し、急速にグラフト機能不全に至ったMPGNと考えられたが、そのあとの免疫組織学的検討で、IgG3κ型の単クローン性IgG沈着症であることが判明した。単クローン性IgG沈着型増殖性腎炎は近年提唱されている糸球体腎炎の一型で、移植後再発例も報告されている。稀有な症例と考えられたため、その臨床経過と病理所見を再検討し、文献的考察と合わせて報告する。


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