移植腎にてC1q腎症を疑うmesangial C1q+IgG沈着症の5例

東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 腎臓小児科
自治医科大学 小児科学講座
* 金井 孝裕
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 腎臓小児科
秋岡 祐子、久野 貴正、三浦 健一郎、古江 健樹、宮村 正和
服部 元史
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理部
山口  裕
自治医科大学 小児科学講座
桃井 真里子

【はじめに】
C1q腎症は、メサンギウム領域へのC1qの優位な沈着をもつ独立した腎疾患として、1985年に、JannetとHippによって提唱された。しかしその後、疾患単位としてのC1q腎症を否定する報告がされ始めたため、確立には至っていない。今回我々は、移植腎にてC1q及びIgGが優位にメサンギウム領域に沈着した5例を経験したので、その臨床経過と組織像を報告する。
【症例】 東京女子医科大学腎臓病総合医療センターにおいて、'02年10月以降に移植腎生検を行った計541例(成人447例、小児94例、ともに実数)を検索し、メサンギウム領域に中等度以上のC1q及びIgGのびまん性沈着を認めた5例を検討した。このうち慢性拒絶反応所見の乏しい4例を対象とした。全例小児で、移植腎生検施行時期は、移植後1年6ヶ月〜7年6ヶ月だった。原腎疾患は、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、常染色体劣性遺伝多発性嚢胞腎(ARPKD)、Alport症候群、慢性間質性腎炎が各1例で、ドナー・レシピエント間の血液型適合性は、血液型一致が2例、血液型不適合が1例、血液型不一致が1例だった。移植腎生検施行理由は、プロトコール生検が3例、軽度蛋白尿に対する生検が1例であった。血尿を呈する症例はなかった。対象例の光学顕微鏡所見は、軽度の管内増殖性を示す症例があるものの、その他は微小変化型であった。電子顕微鏡所見では全例同部位にelectron dense depositの沈着を認めた。移植時の移植腎生検所見では、全例C1q及びIgGの沈着はなかった。対象症例のその後の臨床経過において、現在までに尿所見の悪化を認めるものはなかった。
【考察】 今回の検討より、原腎疾患との関連は明らかではなかったが、移植後経過中に新たにC1q+IgG沈着を認める症例の存在が示された。対象症例の年齢は、これまでの報告と一致し小児であった。しかし、これまでの報告と異なり、中等度以上の尿所見の異常を呈する症例はなかった。移植腎におけるC1q+IgG沈着症例が今後腎症に進展するのか、尿所見の推移を慎重に経過観察していく必要があると考えられた。


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