移植後13年目に抗体関連型拒絶反応のため移植腎機能廃絶に陥った1例

独立行政法人国立病院機構埼玉病院
* 上牧  勇
都立清瀬小児病院 腎臓内科
石倉 健司、幡谷 浩史、浜崎 祐子、池田 昌弘
都立清瀬小児病院 泌尿器科
宍戸清一郎
都立清瀬小児病院 病理
川村 貞夫、森川 征彦 
都立八王子小児病院
本田 雅敬

症例は19歳男子(血液型A型)。
乳児健診で腹部腫瘤を指摘され、polycystic kidney(ARPKD)と診断された。
腎機能障害は、徐々に進行し、4歳時に腹膜透析を導入した。
6歳時に母親(32歳 血液型A型)をドナーとして生体腎移植を行った。
HLAは2ミスマッチ(donor HLA A 23, A 31, B 54,B 61, DR 4, DR9, DR 53, DQ 3)。
免疫抑制剤は、シクロスポリン(維持療法中のtrough level 75-100 μ g/ml)、ミゾリビン、メチルプレドニゾロンの3剤併用とした。
移植後、臨床的に拒絶反応のエピソードはなく、プロトコールバイオプシー(1年、2年、3年、5年、10年)では組織学的に急性拒絶反応の所見はみられなかった。
その他、移植後の臨床経過に特記すべきものはなかった。
移植後5年、10年のプロトコールバイオプシーでは、細動脈の多くに粗大な結節状の硝子様物質の沈着を認め、シクロスポリンによる慢性腎障害を強く認めた。
10年生検以後シクロスポリンを減量し、経過観察していたが、移植12年目を経過した後、誘因なく腎機能障害が進行し,MMFを追加投与したが、13年目に移植腎機能廃絶に陥った。
機能廃絶後に行った移植腎生検(13年目)では、transplant glomerulopathyに加え、細動脈に硝子様物質沈着を伴う高度の壁肥厚と、泡沫細胞を認め、内腔の高度狭窄を認めた。
後日行ったC4dの免疫組織学的検討において、10年生検ではC4dがperitubular capillaryにわずかに陽性であった。
移植後13年の腎生検ではperitubular capillaryにC4dが強く陽性を示した。
移植後12年目の保存血清で行った検査で抗HLA抗体陽性(A13, B13, B67)、flow cross match test陽性であった。
組織所見及び免疫組織学的検討、抗HLA抗体、flow cross match testの結果から抗体関連型拒絶反応と診断した。


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