腎移植後に急性血管型拒絶反応を発症しネフローゼ症状をきたし機能廃絶した1例

京都府立医科大学 移植・再生制御外科
* 秋岡 清一、岡本 雅彦、牛込 秀隆、昇 修治、若林 良浩、
小崎 浩一、貝原 聡、吉村 了勇
 

34歳男性、IgA腎症による慢性腎不全のため33歳時に血液透析導入、34歳時に60歳の母親をドナーに生体腎移植を受け、CsA、MZ、PSL、Basiliximabの4剤により免疫抑制導入維持を受けた。退院時(POD37)のCr1.1mg/dl,尿蛋白(-)であったが、術後50日頃より尿蛋白(2+)のみが増加し、その後さらに尿蛋白(4+)となりCr1.6mg/dlまで上昇したためPOD81に生検目的で入院し、生検像は、液性因子の関与した糸球体炎と血管炎を認めBunff(i1,t2,g3,v3: GradeIII)、MPパルス療法、DSG投与を行った後に、MMFを追加しさらにCsAをFKに変更し、Cr1.2mg/dlに改善し蛋白尿量も半減し退院となった。その後のPOD146およびPOD314の再生検時には、sCr1.6mg/dlと安定し、前回の急性期の変化は改善していたが、尿蛋白(2-3+)とネフローゼ症状が持続していた。POD424に下痢に引き続いた脱水症と代謝性アシドススにてsCr10.2mg/dlまで上昇し再入院となったが、輸液による利尿でsCrは4.1mg/dlまで軽快した。また、POD435 生検では、FK腎毒性を確認した。
その後もsCr値の漸増あり、sCr8.6にmg/dlに達したためPOD493日で、再透析導入となった。急性血管型拒絶反応はまれな病態であり、治療により軽快したがネフローゼ症状が持続し約16ヶ月で機能廃絶した症例を経験したので文献的考察を加え報告する。


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