ABO血液型minor mismatch 生体腎移植後に血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy, TMA)及び抗体関与型拒絶反応を発症した1 症例

京都府立医科大学 移植・再生制御外科
* 牛込 秀隆、坂井 利規、鈴木 智之、昇  修治、貝原  聡、
吉村 了勇
京都府立医科大学 臓器応答探索医学講座
岡本 雅彦、吉澤  淳

【はじめに】ABO血液型minor mismatch生体腎移植後に血栓性微小血管障害症(thrombotic microangiopathy,TMA)及び抗体関与型拒絶反応を発症した症例を経験したので報告する。
【症例】57歳女性、原疾患はIgA腎症で透析導入前に生体腎移植を希望し、HLA typing 5/6 mismatch の54歳夫をドナーとするO型からB型へのABO血液型minor mismatch 生体腎移植を施行した。輸血は直前に2回、移植の既往はなく、2回の妊娠歴で術前のリンパ球クロスマッチテストは陰性であった。
【結果】免疫抑制療法をCsA、Mz、Prの3剤併用療法にBasiliximabを加えて行い、術後順調に経過していたが、術後10日目に尿が赤ワイン色に変色し、急激な貧血を呈した。交差試験で抗B抗体を認めB-cell mediated graftversus-host-disease(B-GVHD)を考えた。同時に軽度急性膵炎、急激な血小板減少、腎機能障害(血清Cr 0.8mg/dlから5.2mg/dlまで上昇)、破砕赤血球の出現を認め、さらに腎生検にて血栓性微小血管閉塞を認めため血栓性微小血管障害症(TMA)と診断した。膵炎に対する治療や血漿交換を行い、免疫抑制剤をCyAからFK、MzからMMFに変更した。また、PRA、フローサイトメトリー法で抗ドナー抗体のde novoの産生を確認した。抗体関与型拒絶反応による血栓性微小血管閉塞を考慮して血漿交換法の継続と抗CD20モノクロナール抗体リツキシマブの投与を行った。その結果、抗ドナー抗体は消失し、抗B抗体は完全に陰性化していないが抗体価の減少とともに腎機能は回復、術後34日目には血清Cr 1.6mg/dlとなった。
【結語】血栓性微小血管障害症及び抗体関与型拒絶反応に対して血漿交換、リツキシマブの投与が奏効したと考えられた症例を1例経験した。

戻 る  ページの先頭