腎移植後1年6ヶ月目に発症した、plasma cell rich rejectionの1例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 清水 朋一、石田 英樹、土岐 大介、西田 隼人、飯田 祥一、
瀬戸口 誠、尾本 和也、白川 浩希、田邉 一成、
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
山口  裕

 症例は45歳男性。原疾患はIgA腎症。平成16年6月血液透析導入し、平成17年8月、兄をドナーとした血液型適合生体腎移植術を施行した。移植前のクロスマッチでは陰性であったが、Luminex single antigen analysisでは抗ドナーHLA特異抗体の存在を認めたため、移植前に3回の血漿交換施行し、免疫抑制はrituximab(RIT)200mgを含めたtacrolimus(TAC)、mycophenolate mofetil(MMF)、basiliximab(CIM)、methylprednisolone(MP)の5剤併用とした。移植後移植腎機能は良好で、血清クレアチニン(s-Cr)は1.2mg/dL程度で外来フォローアップされていた。
 腎移植後1年6 ヶ月目の平成19年2月、s-Cr 1.8mg/dLと上昇したため、移植腎生検を施行した。病理組織学的に1.Focal aggressive tubulo-interstitial rejection, severe. 2.Peritubular capillaritis, focal and very mild. 3.MesangialIgA deposition, residual. 4.Arteriolar hyalinosis and arteriosclerosis, mild.と診断した。浸潤細胞は単核球や多核球の他、形質細胞が多数含まれていたためplasma cell rich rejectionと診断した。免疫組織学的にはperitubularcapillary(PTC)へのC4d沈着は認めず、IgAの沈着をメサンギウムに軽度認めた。以上より、Banff分類でacute T-cell-mediated rejection, Type IIBと診断し、ステロイドパルス療法を施行した。
 ステロイドパルス療法後の生検ではFocal aggressive tubulo-interstitial rejection, moderate.と軽減されていた。やはり浸潤細胞は形質細胞が多数含まれておりplasma cell rich rejectionの像であった。現在s-Cr 1.7mg/dLで移植腎機能は安定している。
 今回腎移植後1年6ヶ月目に発症した、plasma cell rich rejectionの1例について文献的考察を含め報告する。


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