迅速組織診断を参考にして移植を断念した心停止腎の2例

九州大学 腎疾患治療部
* 杉谷  篤、升谷 耕介、鶴屋 和彦、飯田 三雄
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学
北田 秀久、岡部 安博、吉田 淳一、土井  篤、西岡 泰信、
錦  建宏、田中 雅夫
九州大学大学院 病態機能内科学
升谷 耕介、鶴屋 和彦、飯田 三雄

 心停止ドナーからの献腎移植の場合、移植可否の判断が困難なことが多い。今回、ドナー情報、検査データ、死戦期動態、摘出腎の肉眼所見に加え、迅速組織診断を参考にして移植を断念した2症例を経験した。症例1は、52歳女性、脳内出血で救急搬送され、開頭術を受けるも回復不能で、3日後に心停止下腎提供となった。主な検査所見は、Na177mEq/l、Cl147mEq/l、HbA1c13.9%、DOA8γにて血圧110/60mmHg、尿量は5L/dayであったが、血糖292mg/dl、尿糖4 、尿蛋白258.8mg/dl(約5g/day)であった。1日後心停止となり、温阻血時間3分、摘出時間12分で摘出し、潅流状態は良好であった。①高Na血症による細胞内脱水、②迅速組織で結節型糖尿病性腎硬化症であることより(画像2枚)、若年レシピエントへの移植を断念した。症例2は、71歳男性、脳幹出血、救急搬送から4日後に摘出、心停止から潅流までの温阻血時間は22分であったが、動脈硬化が強く十分に潅流できず、実質的な温阻血時間は74分と考えられた。搬送された腎臓は動脈硬化が高度、腎動脈にも狭窄が見られた。迅速組織で高血圧性腎硬化症の所見であったので(画像1枚)、Primary non-functionを懸念して移植を断念した。2例とも対側腎は県内他施設で移植されたが、症例1の対側腎は透析離脱不能、症例2の対側腎はCrが低下していない。迅速組織所見の質、時間性を加味した有用性を検討したい。


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