感染性腸炎による急性腎不全後に興味ある組織像を呈した死体腎移植例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、堀家 敬司、小野田 浩、坂井  薫、荻山 慶子、
北村  謙、及川  理、長坂 隆治、後藤 憲彦、打田 和治、
両角 國男
増子記念病院 泌尿器科
植木 常雄

 2006年からの冬はノロウイルスによる集団発生感染性胃腸炎が話題となった。感染性胃腸炎後の移植腎生検組織で興味ある所見を認めた症例を提示する。
 症例は27歳男性、血液型はA型である。慢性糸球体腎炎からの末期腎不全で血液透析を施行していたが、2006年12月に中国で死体腎移植術を受けて帰国した。免疫抑制剤は、シクロスポリン、プレドニゾロン、MMFが使用されていた。
 移植後20日が経過した2007年1月に下痢・発熱を主訴に来院した。血清クレアチニン値は0.96mg/dlで、流行していたノロウイルス感染症が疑われ、MMFを中止し補液管理のため入院となった。入院4日目には下痢と発熱は軽快し、入院6日目からはMMFを再開した。しかし、入院時より軽度の蛋白尿が持続し、血清クレアチニン値は入院後に1.5mg/dlと上昇していたものが全身状態の改善後も低下せず、入院後12日目に移植腎機能低下の原因検索のために移植腎生検を施行した。血清クレアチニン1.5mg/dl、蛋白尿(+)だった。
 移植腎生検組織では、間質には縞状にごく軽度の線維化と委縮尿細管を認め、巣状に尿細管上皮細胞障害やisometricな空胞変性、微小石灰沈着が存在した。間質への小円形細胞浸潤はなく、ごく一部のPTC腔内に単核球集積ありminimal tubulitisを認めた。数個の糸球体で分節性に内皮細胞の腫大や単核球の集積を示す移植糸球体炎が存在した。明らかな液性拒絶反応および細胞性拒絶反応像はなく、巣状の尿細管障害像から感染性胃腸炎による脱水でシクロスポリン腎障害が修飾された病態と考え経過観察した。蛍光抗体法によるC4d染色で糸球体係蹄とPTC、静脈内皮にびまん性に強くlinearな陽性所見を認めた。
 本症例において、液性拒絶反応を臨床的にも組織学的にも呈していないにもかかわらず移植腎生検組織でC4dがPTCおよび糸球体係蹄にlinearに強くびまん性に陽性所見を認めたことについて、ノロウイルス感染症(ウイルス血症)の側面から考察を加える。


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