当院で施行した腎移植後protocol biopsyの検討

京都府立医科大学 移植・再生制御外科
* 牛込 秀隆、坂井 利規、鈴木 智之、昇  修治、貝原  聡、
吉村 了勇
京都府立医科大学 臓器応答探索医学講座
岡本 雅彦、吉澤  淳

【目的】病理組織学的にsubclinical rejectionである無症候性acute rejection(AR)や薬剤性腎毒性などを早期診断、治療する目的でprotocol biopsyを施行している。今回、当院で施行した腎移植後protocol biopsyの有用性を検討した。
【対象と方法】2004年1月より2006年4月までに腎移植を行い、無症候性に経過し術後1ヶ月、1年でprotocol biopsyを施行した症例47例を対象とした。免疫抑制療法は40例がCyclosporine(CsA)、7例がTacrolimus(Tac)を含む3剤併用療法であった。病理組織診断はBanff分類に基づき診断した。
【結果】(術後1ヶ月)acute rejection(AR)はborderline changeが13例、1aが8例、1bが3例認め、1a以上の症例に対してsteroid pulseまたはdeoxyspergualinにて治療した。CsAやTacによる腎毒性は4例で認め、CsAやTacを減量した。(術後1年)borderline change群の10例は、組織学的に変化なくS-Crの変化も平均 0.19mg/dlで尿蛋白は陽性5例中4例が陰性化して新たに陽性になる症例はなかった。borderline change群の3例は、組織学的に正常化しS-Crの変化は平均 0.22mg/dlで尿蛋白は陽性2例中2例が陰性化して陰性だった1例が陽性化した。治療群は、いずれも組織学的に改善を認めS-Crの変化も平均 0.24mg/dlで尿蛋白は陽性10例中6例が陰性化して新たに陽性になる症例はなかった。組織学的に薬剤腎毒性の症例はなかった。その他、再発腎炎の疑いが2例に認められ、IgA腎症再発疑いの症例1例は扁桃腺摘出を施行した。
【結語】慢性拒絶の要因の1つとされるsubclinical rejectionの症例を術後1ヶ月で診断、治療することができ、いずれも腎機能は良好で生着中である。当院におけるborderline change の症例に対する拒絶反応の治療は現時点において不要であるが今後も観察する必要があると考えられた。protocol biopsyは、無症候性ARの早期診断および薬剤毒性の診断に有用であり、長期的な移植腎予後の改善にも有用であると考えられた。

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