多彩な免疫複合体沈着を認め診断に苦慮した移植後de novo腎炎の1例

国立成育医療センター 腎臓科
* 中山 真紀子、寺町 昌史、笠原 克明、亀井 宏一、鈴木 輝明、
飯島 一誠
国立成育医療センター 病理部
松岡 健太郎、中川 温子

 症例は13歳女児。両側低形成腎(BOR症候群)のため末期腎不全となり、10歳で腹膜透析を導入した。11歳時実父をドナーとする血液型一致生体腎移植術を施行した。免疫抑制剤はメチルプレドニゾロン、タクロリムス、ミゾリビン、バシリキシマブを使用した。3ヵ月目プロトコール生検で急性拒絶反応の所見認め、ステロイドパルス療法を施行した。1年目プロトコール生検では拒絶反応の所見認めず、以後血清Cr値0.8−0.9mg/dl、尿所見正常で安定して経過していた。移植後2年目の13歳3 ヵ月時、血尿蛋白尿出現、低蛋白血症と腎機能低下を認めたため腎生検を施行した。拒絶反応についてはBanff分類でBorderlineであったが、光顕でMPGN様のメサンギウム増殖性腎炎像、蛍光抗体染色で基底膜やメサンギウムにIgGやC3を主とした沈着、電顕所見で上皮下、内皮下、基底膜、メサンギウムに高電子密度物質の多彩な沈着を認めた。ステロイドパルス療法、ステロイドの増量、ミゾリビンからMMFへの変更、ARB内服を開始し、腎機能改善傾向となった。しかしその約1 ヵ月後感染を契機に再度腎機能低下認めたため再度腎生検を行ったところ、拒絶反応については軽減しているものの、同様のMPGN様の所見を認めた。以後外来にて経過観察行い、血清Cr値1.1-1.2mg/dlで安定し、蛋白尿も減少、低蛋白血症もなく、臨床的には腎炎は改善傾向となり、徐々にステロイドの減量が可能となった。移植後3年目プロトコール生検で拒絶反応の所見は認めなかったが、依然として腎炎所見は持続していた。
 本症例は、原疾患が低形成腎であり、De novo腎炎と診断した。電顕にて多彩な免疫複合体沈着所見を呈し、急性拒絶反応を合併しており、診断に苦慮した1例である。原因や病態について病理学的に検討し、御意見をお伺いしたい。


戻 る  ページの先頭