膜性病変を有する移植後糸球体炎の1例

東邦大学医学部 腎臓学教室
* 高須 二郎、二瓶  大、板橋 淑裕、稲坂  淳、森  義明、
河村  毅、水入 苑生、相川  厚
東邦大学医学部 病理学教室
渋谷 和俊
済生会横浜市南部病院 内科
酒井  謙

 症例は41歳男性。1994年に膜性腎症によるネフローゼ症候群と診断された。2004年に血液透析を導入、その後透析歴10ヶ月にてA型からO型への血液型不適合の生体腎移植を行った。術前は脾摘、DFPP,血漿交換を行い、免疫抑制はCsA、MP、MMF、BLXを使用した。術後12日目に血清Crが1.7mg/dlへ上昇して、腎生検を行ったところ、PTC内の好中球浸潤、糸球体内の好中球浸潤、V2相当の動脈内膜炎、尿細管炎を認め、血液型不適合移植に伴う、抗体関連型の急性拒絶反応と診断した。ステロイドパルス、DSG、血漿交換を用いたが、Crは1.5-2mg/dlで遷延し、移植後2カ月頃からは2gの蛋白尿も出現した。2か月目の腎生検では蛍光抗体陰性、糸球体内血栓、内皮細胞腫大から、移植後糸球体炎と考えた。なおこのときの電子顕微鏡写真において、上皮下沈着物を認め、膜性腎症の再発を考えた。その後、ステロイドパルス、血漿交換、LDL吸着を行ったが、尿タンパクは現在も遷延し、血清クレアチニンは2.7mg/dlである。
 蛋白尿の責任病変と今後の治療につきご教示いただきたく症例提示した。(写真は2 ヶ月目の腎生検。PAS染色および電子顕微鏡)


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