Rituximab投与後アデノウイルス移植腎盂腎炎の1例

秋田大学 泌尿器科
* 米田 真也、井上 高光、小原  崇、齋藤  満、熊澤 光明、
湯浅  健、松浦  忍、土谷 順彦、佐藤  滋、羽渕 友則
秋田大学 第3内科
小松田 敦

 症例:47歳男性、腎炎による慢性腎不全で2001年6月生体腎移植術施行。2002年11月慢性拒絶により血液透析再導入。2005年4月、2次生体腎移植術施行。抗ドナーHLA抗体保有のため、術前rituximab投与及び脾臓摘出術を行った。SCr 1.0 mg/dl程度で移植腎機能は良好であったが、2次生体腎移植1年8 ヵ月後の2007年12月2日から体調不良、血尿あり。12月11日発熱、graftの圧痛が認められ、緊急入院。入院時検査所見:WBC 14100/mm3、SCr 3.44 mg/dl、CRP1.20 mg/dl、尿検査 RBC>100/HPF、WBC20 〜 29/HPF。腎盂腎炎、結石、拒絶、悪性腫瘍等を鑑別診断においた。抗生剤に反応せず、発熱、腎機能、炎症所見は改善しなかった。尿培養及び尿細胞診は陰性。移植腎超音波検査では軽度水腎症を認めた。逆行性腎盂造影およびCTでは尿路結石や腫瘍性病変なし。膀胱鏡検査では、膀胱内に腫瘍性病変、炎症性変化を認めず、移植尿管口から血尿の流出を認めた。12月19日腎生検では、軽度慢性移植腎症を認めるのみであった。入院時のアデノウイルス抗体価が16倍と軽度上昇していたため、アデノウイルス腎盂腎炎を疑い、MMF1500mg/dayから1000mg/dayに減量し、vidarabine投与開始。数日後には解熱し、炎症反応、腎機能も改善した。腎生検標本の抗アデノウイルス抗体による免疫染色で、尿細管上皮に顆粒状の封入体を認めた。尿中アデノウイルスPCRは陽性で、1月5日退院時のアデノウイルス抗体価は1024倍と上昇していた。生体腎移植後アデノウイルス腎盂腎炎の発症は膀胱炎に比べて少なく、今までに数例の報告が散見されるのみである。本症例はhighly sensitized症例であり、術前にrituximabを使用した。B cellは現在も0%であり、強い免疫抑制状態であったことが発症の原因と考えられる。アデノウイルス腎盂腎炎は細菌性尿路感染、結石、拒絶、悪性腫瘍等との鑑別に種々の検査を要するとされ、本症例においても診断に苦慮したので報告する。


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