移植腎に膜性腎症が発症した一症例

社会保険中京病院 腎透析科
* 渡邊 達昭、野田 万里、葛谷 明彦、堀江 勝智、佐藤 元美、
露木 幹人
社会保険中京病院 泌尿器科
加藤 真史、絹川 常郎

 我々は、移植腎に膜性腎症が発症した症例を経験したので報告する。症例は64才男性、60才時検尿異常、高血圧を指摘され他院受診、精査にて膜性増殖性糸球体腎炎と慢性腎不全と診断され、ステロイド治療を受けた。治療に反応なく、同年血液透析導入となった。5ヶ月の透析期間を経て、他院にて、妻を腎提供者として生体腎移植を施行された。組織適合性は良好、免疫抑制剤として、シクロスポリン。術後のベストクレアチニンは0.8。63才時、転居に伴い当院での管理となった。当院外来にても以前と同じ免疫抑制剤と降圧剤を継続した。外来通院中、クレアチニン0.9mg/dL、C2 400程度で安定していた。2ヶ月前(64才)突然尿の泡立ちに気づいた。一日尿蛋白が1.3gと増加しており移植腎生検を行った。入院時、身体所見上は明らかな異常所見なし、検査所見は尿蛋白以外は異常所見なし。腎生検所見PAM染色では明らかな膜変化確認できなかったが蛍光のIgGにて糸球体血管係蹄壁に沿って沈着を認めたため、膜性腎症と診断した。移植腎に膜性腎症が見られることは比較的まれなことであり、一次性二次の両面から検討する必要がある。今後の経過を注意深く観察したい。


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