移植後再発IgA腎症における扁桃腺摘出前後の経時的腎生検例

東邦大学医学部 腎臓学教室
* 酒井 謙、實重 学、高須 二郎、吉澤 雄介、大橋 靖、河村 毅、水入 苑生、相川 厚
済生会横浜市東部病院
宮城 盛淳

 症例:36歳男性。1997年7月IgA腎症を原病とする末期腎不全にて、兄より生体腎移植を行った。移植後6年の2003年9月ころより蛋白尿(0.9g/day)と血尿(3+)が出現した。同年12月1日に腎生検を行い、IgA腎症の再発と診断した。IgA腎症再発までの基礎免疫抑制はmPSL, tacrolimus, mizoribineであったが、再発確認後はmizoribineからmycophenolate mofetil 1000mgへ変更し、Valsartan 80mgを加えた。さらに12月24日には扁桃腺摘出を行った。ステロイドパルス療法は行わなかったが、たんぱく尿は上記治療後6カ月間で消失、血尿は約3年半で消失し、現在まで血清クレアチニン値は1.0mg/dlで良好である。
 腎生検は扁桃腺摘出前(2003年12月)、摘出後2年(2005年12月)と摘出後4年(2008年3月)の計3回行った。3回の腎生検を通して、メサンギウム器質および細胞増殖は増加し、3回目腎生検ではメサンギウム間入も目だった。
光検上のparamesangial depositは消退傾向にあったが、蛍光抗体上のIgAの染色性は不変で、硬化糸球体も0%、4.5%、10%と増加した。一方で間質尿細管構造は保たれていた。
 再発IgA腎症に対して、扁桃腺摘出+mycophenolate mofetil+ARBは臨床的寛解をもたらしたが、糸球体の慢性組織障害は進行した。IgA腎症に対する各種治療の臨床的効果と病理所見の対比を知るうえで貴重な症例と考えた。


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