免疫抑制剤減量により寛解に至った中枢神経の腎移植後リンパ増殖性
疾患の1例

市立札幌病院 病理科
* 藤田 裕美、小川 弥生、武内 利直
市立札幌病院 腎移植科
原田 浩、中村 美智子、平野 哲夫
市立札幌病院 リウマチ血液内科
皆内 康一郎
市立札幌病院 脳神経外科
大坂 美鈴

 症例は43歳男性。平成12年3月に慢性糸球体腎炎と診断され、同年6月に人工透析導入。同年9月に母親をドナーとしたABO型不適合生体腎移植が行われた。拒絶予防として脾摘・ALG投与が行われた後に、維持療法としてTAC、MMF、PDの3剤が投与されていた。以後、拒絶や腎機能悪化など認めず経過。
移植から約7年後の平成19年6月、頭痛・吐き気が出現し近医を受診。脳CT検査にて、右尾状核に腫瘤性病変が指摘され、同年7月リウマチ血液内科紹介受診となった。腫瘍生検によりCD20陽性のB細胞のびまん性の増殖を認め、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)と診断され、骨髄を含めた全身検索にて中枢神経原発とされた。化学療法開始前に、MMFを中止、TACを減量したところ、腫瘍の縮小を認め、現在、寛解に至っている。免疫抑制剤減量のみで寛解に至り、さらに移植腎を温存することが可能であった、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)の一例を経験し、報告する。


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