Flow-PRAにより抗ドナー抗体を検出し、術前に血漿交換とRituximab投与を
行った献腎移植症例の移植腎生検所見

九州大学大学院 病態機能内科学
* 升谷 耕介、藤﨑 明子、山田 俊輔、鶴屋 和彦、飯田 三雄
九州大学大学院 臨床・腫瘍外科学
北田 秀久
国立病院機構福岡東医療センター 内科
片渕 律子

 症例は63歳、女性。慢性糸球体腎炎を原疾患とする腎不全のため血液透析中(透析歴18年)。今回、心停止ドナーからの献腎移植のため当院に緊急入院した。術前に実施したFlow-cytometric cross matchではB cellが陽性、flow-PRA single antigenでドナー特異抗体が同定された。術前に血漿交換(PEX)を2回施行し、Rituximab 200mgを投与した。移植後7日(7POD)に血液透析を離脱。10POD(血清クレアチニン値[Cr]5.23mg/dl、尿量1077ml/日)に施行した移植腎生検では多数の好中球を含む高度のperitubular capillaritis(PTCitis)を認めたため急性抗体関連拒絶(AMR)疑いと診断し、PEXを3回施行、Rituximab 200mgを投与した。その後も尿量は順調に増加し、Crも低下した。POD39(Cr 1.42mg/dl)に施行した移植腎生検では一部に高度のPTCitisを認めたが、PTCへの好中球浸潤は消失していた。尿量が1500-1700ml/日と保たれ、Crも引き続き低下傾向にあったこと、2度の生検でPTCへのC4d沈着を認めなかったことから追加の治療は行わず退院した。移植後5 ヶ月が経過した現在もCr 1.15mg/dlと良好に経過している。本症例は術前にFlow-PRAによる抗ドナー抗体の検出、血漿交換、Rituximab投与を行った献腎移植としては稀な症例である。移植腎生検ではPTCへのC4d沈着は陰性であり、臨床的にも組織学的にもAMRとは診断できない。本症例における①1回目の移植腎生検で観察されたC4d沈着を伴わない好中球優位のPTCitisの意義、②術前に行ったPEX、Rituximab投与が組織所見に与える影響について御検討をお願いしたい。


戻 る  ページの先頭