生体腎移植後4日目の血管内膜炎を伴う急性拒絶反応の1例

市立札幌病院 病理科
* 小川 弥生、藤田 裕美、武内 利直
市立札幌病院 腎移植科
原田 浩、中村 美智子、平野 哲夫
北海道大学病院 泌尿器科
三浦 正義

 腎移植後早期に発症した臨床病理学的なacute T-cell-mediated rejectionの1例を報告する。
 症例は55歳の男性。慢性糸球体腎炎を原疾患とし、27年の透析後、52歳の弟をドナーとする血液型適合生体腎移植術(O→O)を行った。術前の検査では、ダイレクトクロスマッチは血清学的にもフローサイトメトリー法でも陰性であった。免疫抑制剤はTAC、MMF、MPの3剤を用いた。術後経過は良好で血清クレアチニン値もPOD2で1.6mg/dlまで低下し、POD3からTAC、MMFの2剤投与としたが、翌日から尿量が激減し、急性拒絶を疑い移植腎生検を行った。
 組織学的には、限局性のリンパ球浸潤が認められ、一部の細動脈内皮細胞の腫大と、同部へのリンパ球浸潤を認め、intimal arteritis, v1の所見と判定した。また蛍光抗体法検索ではC4dの有意な陽性所見は認められず、acute T-cell-mediated rejection, IIAと診断した。同日行ったFlow PRAは陰性で、MPZパルス療法およびDSG投与でPOD11には、血清クレアチニンは1.1mg/dlまで改善し退院となった。


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