促進型急性拒絶反応を発症した血液型適合夫婦間腎移植の1例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 松尾 七重、小林 賛光、山本 泉、三留 淳、丸山 之雄、
早川 洋、宮崎 陽一、山本 裕康、宇都宮 保典、細谷 龍男
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
山口 裕

【症例】
59歳女性
【現病歴】
IgA腎症とANCA関連腎炎が原疾患の慢性腎不全にて腹膜透析を17 ヶ月施行。今回、夫をドナーとする生体腎移植目的で入院。血液型は適合、HLAは5 locus mismatchであった。
【入院後経過】
CDCはT細胞、B細胞ともに陰性であったが、妊娠歴が2回あるため、免疫抑制剤(MMF)を1週間前より開始し、術前に血漿交換を1回施行した。免疫抑制剤はMMF、TAC、MP、Basiliximabとした。手術は阻血時間66分で問題なく終了し、初尿も確認した。術後2日目までは血清Crも低下し、尿量も保たれていたが、術後3日目より血清Cr上昇、尿量減少、血小板減少、LDH上昇を認め、ドップラーエコーで移植腎血流のRIインデックスの上昇を認めた。抗体関連拒絶反応と診断し、血漿交換、ステロイドパルス療法に加え、Rituximab 200mg/bodyを投与した。腎生検では、#1. Acute vascular rejection(Endarteritis,moderate to severe)、#2. Acute antibodymediatedrejection(Peritubular capillaritis, diffuse and severe、Transplant glomerulitis, moderate to severe、Interstitial hemorrhage, severe)、#3. Patchy tubular injury, moderate、#4. Arteriosclerosis, moderateを認め、Banff分類AMR?(ACR?A 〜 B)(i0,t0,g2 〜 3,v 1〜 2,ptc3)であった。術後2週間は透析も併用し、血漿交換を繰り返したが、その後利尿期に至り、血清Cr0.8mg/dlまで改善した。
【結語】
妊娠歴のある夫から妻への生体腎移植で、CDC陰性にも関わらず促進型急性拒絶反応をきたした症例を経験したので、若干の考察を加え報告する。


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