移植腎における髄放線障害(Medullary ray injury)の意義

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 小林 賛光、山本 泉、山本 裕康
東京慈恵医大柏病院 病理
金綱 友木子、山口 裕
岐阜大学 泌尿器科
伊藤 慎一
東京女子医科大学 腎臓小児科
秋岡 祐子、服部 元史
東京女子医科大学 外科
寺岡 慧
東京女子医科大学 泌尿器科
田邉 一成

【目的】
第8回のバンフ会議では、慢性拒絶反応が明確な定義付けをされ、それまで使用していた慢性移植腎症(Chronic allograft nephropathy)はInterstitial fibrosis and tubular atrophy without any specific etiology(IF/TA)という言葉に変更された。しかし、IF/TAの病因には様々な種類の病態が含まれている(カルシニューリン インヒビター(CNI)の毒性、閉塞性腎症、腎盂腎炎など)。しかしながら、これらの病因を組織上鑑別する方法は、確立されていない。髄放線障害(medullary ray injury(MRI))はCNI毒性の動物モデルにおいては、細動脈障害や血管攣縮が関与した組織障害で、進行すると同部位の縞状の線維化や尿細管萎縮に移行することが報告されている。
したがってMRIはCNIの毒性による早期の腎組織障害の指標の一つと考えられる。今回我々は、MRIとCNIおよびその他の病態との関連を明らかにし、非免疫系慢性移植腎障害におけるMRIの意義を調べた。
【方法】
対照は2000年3月から2008年2月までに東京女子医科大学と岐阜大学で行われた移植腎生検のうちMRIを認めた70例とした。我々は、髄放線に限局または同部位を中心とした顕著な線維化や炎症性変化を認めたものをMRIと定義した。MRIに、瘤状の高度な細動脈硝子化および尿細管上皮のisometric vacuolization、間質へのTamm-Horsfall蛋白の漏出およびthyroid-like appearance、尿細管腔内・周囲に好中球優位の炎症性細胞浸潤を伴った場合、それぞれCNI毒性、閉塞性腎症、腎盂腎炎によるMRIと考えた。
【結果】
全70例のMRI例うちCNI毒性によるMRIは23例で32.8%、閉塞性腎症は35例で50%、腎盂腎炎は6例で8.6%、その他は6例で8.6%であった。臨床的には、閉塞性腎症のうち5例に排尿時膀胱尿路造影を施行した結果4例(80%)でVURを認めた。
【結論】
今回我々は、MRIはCNI毒性のみではなく種々の病因でおこりうることを明らかした。また、MRIのうち半数例は閉塞性腎症によるものが考えられ、その内80%(4/5)で臨床的にVURの存在が確認されたことから、MRIは閉塞性腎症の早期の変化をとらえる指標となる可能性が示唆された。

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