移植腎に発生した膀胱尿管逆流症とその終末期病理所見

市立札幌病院 腎移植科・泌尿器科
* 中村 美智子、原田 浩、早崎 貴洋、宇野 仁輝、松本 隆児、
大澤 崇宏、高田 徳容、関 利盛、富樫 正樹、平野 哲夫
市立札幌病院 病理科
小川 弥生、武内 利直

【目的】
我々は以前、移植腎膀胱尿管逆流症(VUR)は移植腎生着率を低下させることを報告したが、今回はその終末期の病理所見につき代表例を検討した。
【症例】
症例1:39才女性。SLEによるCRFで4年のHD後、母をドナーに生体腎移植術を施行。移植後9.5年の腎生検でCAN2bの診断で、尿細管の拡張や尿細管内の円柱形成が目立ちVURの関与を示唆されVUCGを行ったところgrade2のVURを認めた。逆流防止術を施行したが、腎機能は徐々に悪化、10年目の生検でもCAN2bの診断で、その後HD再導入、1年後2次移植に至った。症例2: 21才女性。Fraiser synd.に伴うFSGSのため4 ヶ月のHDを経て、母をドナーに生体腎移植術を施行。移植後8年目より腎機能が悪化、生検でCAN2、尿細管の萎縮と拡張、髄質の円柱形成を認めた。その後も徐々に腎機能は低下し、移植後10年でHD再導入、1年後2次移植となった。2次移植前の精査でVURが判明したが、移植後febrile UTIのエピソードはなかった。症例3: 36才女性。CGNによるCRFのため19年のHDを経て献腎移植術施行。移植直後のVCUGで移植腎にgrade1のVURを認めていたが腎機能は良好で出産も経験した。しかし腎機能悪化を認めた移植後7年目の生検でCAN1の診断、その5 ヵ月後の生検ではVURに付随すると考えられる間質変化、炎症細胞浸潤を認めた。また同時期のVCUGでgrade2のVURが見られ、その後腎盂腎炎で入院、尿管口へのコラーゲン注入も無効で腎機能は低下し、移植後8年でpre-emptive2次移植に至った。
【結語】
Tamm-Horsfall蛋白染色は陰性であったが、尿細管の拡張・萎縮所見や間質への炎症細胞浸潤などVURを示唆する所見が得られ、腎機能低下の時期と一致した。はっきりしたUTIの既往が見られた症例は少ないが、全例女性であり、不顕性のUTIがVURを伴う移植腎へ影響し、腎機能低下を助長した可能性は否定できないと考えられる。


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