組織学的に二次性oxalosisが疑われた生体移植腎の一症例

三井記念病院 病理部
* 藤井 晶子
東京女子医科大学 腎センター泌尿器科
清水 朋一、田邉 一成
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
山口 裕

 32歳女性。26歳に慢性腎不全となり腹膜透析導入し、6 ヶ月後に他院で54歳の母をドナーとしてABO適合生体腎移植が行われた。術前に抗ドナーリンパ球抗体陽性。DFPP3回とPEX2回が術前に施行された。免疫抑制剤としてFK、MP、MMFが用いられた。近医でフォローアップされていたが移植腎機能のコントロールは困難であった。30歳時にsCr 3.47mg/dlまで上昇。FK減量、セルセプト投与を行い、31歳時にsCr 1.6mg/dlまで回復したが、10 ヶ月後にsCr2.45mg/dlに再上昇した。他院での移植腎生検で薬剤性腎障害が指摘されている。今回、移植腎不全の治療および献腎移植登録目的で東京女子医大を紹介受診。SCrは3.4mg/dlであった。移植腎生検を施行(術後2208日)。検体は腎髄質主体で糸球体が含まれなかったが、尿細管萎縮と残存尿細管の過形成および中等度の動脈内膜線維性肥厚を認め、拒絶の所見は認めなかった。3 ヵ月後、sCr 3.83mg/dlと上昇し、慢性拒絶が疑われ入院。
ステロイドパルス療法と移植腎生検を施行(術後2230日)。糸球体は半数以上が硬化しており、残存する糸球体は大部分が虚脱傾向を示した。地図状の尿細管萎縮と間質線維化、残存尿細管の過形成を認めた。Tamm-Horsfallproteinの沈着も所々に見られた。動脈の内膜維性肥厚は中等度。細動脈壁には著明な硝子化を認め、一部で内腔閉塞を伴っていた。この生検では尿細管に石灰沈着を認め、特に近位尿細管内腔にシュウ酸塩の沈着が目立った。Banff IF/TA2-3(i1, t0 g0,v0, ptc0, ptcbm0, ci2-3, ct2-3, cg0, cv0, ah3, PTC-)。
 移植腎機能低下の原因として拒絶反応以外にも様々な要素が存在し、病理組織診断に苦慮する場合がある。今回、薬剤性腎障害、動脈硬化、尿路閉塞性変化に加え、二次性のoxalosisを疑わせる近位尿細管の石灰沈着が合併した生体腎移植症例を経験したのでこれを提示する。


戻 る  ページの先頭