生体腎ドナー適応評価のために術前腎生検を行った症例の検討

京都府立医科大学 臓器応答探索医学講座
* 岡本 雅彦、吉村 了勇
京都府立医科大学大学院 移植・再生外科学
坂井 利規、鈴木 智之、昇 修治、牛込 秀隆、阪本 靖介、
吉村 了勇
京都府立医科大学 計量診断病理学
浦崎 晃司
京都府立医科大学 腎臓内科学
森 泰清
京都大学大学院 腎臓内科学
深津 敦司
近江八幡市民総合医療センター 外科
秋岡 清一
だいもん内科・透析クリニック
大門 正一郎

【背景・目的】
本邦では死体からの臓器提供が少ないため腎移植の多くが生体ドナーから提供されるが、高齢者や高血圧・糖尿病を有するMarginal donorのためその適応判断に苦慮する場合も少なくない。実際にone-hourbiopsyにて糸球体硬化や、間質の線維化など持ち込み病変が見られる場合も多い。我々は腎臓内科医の協力を得て生体腎ドナー適応評価のために積極的に術前腎生検を行っているが、今回当施設で提供前に腎生検を行い最終的な適応判断をした7症例につき検討した。
【対象・結果】
7例の平均年齢は60±5(50−64)歳、男性6例、女性1例、レシピエントとの関係は父5例、母1例、兄弟1例であった。生検に至った理由は糖尿病3例、尿蛋白陽性3例、軽度低腎機能1例であった。膜性腎症の1例ではびまん性の糸球体基底膜の肥厚がみられ、他にはごく一部の糸球体硬化の見られたものから、細動脈肥厚の見られたものまであった。最終的には他の臨床データと合わせ適応を判断しインフォームドコンセントを得た上、7例中4例で移植を施行し3例で断念した。いずれの移植実施例でもレシピエントは良好な腎機能で生存生着中であり、ドナーの腎機能悪化も認めていない。
【考察】
生体腎提供可否に関しては非侵襲的検査にて判断することが好ましいが、腎生検の所見を含めて総合的な判定が必要な場合もある。特に生体腎ドナーが片腎となることで、長期的にみて腎機能低下とならぬよう慎重な判断が必要である。今後はこれら移植を施行したドナーとレシピエントの長期経過について厳重に観察する必要があると考えられる。

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