膜性腎症を有するドナーからの生体腎移植の長期経過の検討

近江八幡市立総合医療センター 外科
* 秋岡 清一
京都府立医科大学大学院 臓器応答・探索医学
岡本 雅彦、吉村 了勇
京都府立医科大学大学院 移植・再生制御外
牛込 秀隆、昇 修治、坂井 利規、鈴木 智之、阪本 靖介、
吉村 了勇
京都府立医科大学大学院 病院病理部
浦崎 晃司
京都大学大学院医学研究科 腎臓内科学
深津 敦司

【はじめに】
腎移植のドナー不足に対して、生体腎移植のドナーの条件を拡大し、膜性腎症の父親をドナーとした生体腎移植の1例を報告する。
【症例】
患者は38歳、男性、22歳時に蛋白尿を認め、腎機能の悪化により37歳時から腹膜透析の導入維持であった。
63歳の父親は、蛋白尿の精査から膜性腎症を指摘されていたが、蛋白尿以外の腎機能は良好で、腎生検の再検でも組織学的変化が軽微であったため、レシピエントおよびドナーの強い希望から、十分なインフォームドコンセントの後に、父親をドナーとした生体腎移植を実施した。CsAを中心とした3剤併用療法で免疫抑制療法の導入維持を行った。術後の拒絶反応もなく腎機能は安定しており、移植後38 ヶ月後の電顕像では係蹄基底膜内に淡明化したdepositが多数存在し淡明化しつつあるdepositも少数散見され、上皮下、内皮下dense depositは認められず、メサンギウム基質内にdense depositは認められず、depositの分解産物と思われる顆粒状物質が少量散在しており、StageIVの膜性腎症と診断され、ドナーの膜性腎症が組織学的にも寛解していた。移植後54 ヶ月経つ現在もレシピエントは蛋白尿も認めずsCr1.7mg/dl程度腎機能も安定し外来通院中であり、ドナーはsCr1.4mg/dl程度と安定し他院で通院加療中である。
【結語】
軽度の腎障害を有するドナーでも、十分な評価の後にドナーとして適応があると判断された。


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