急性腎不全を合併した脳死ドナーの腎障害:ゲフリール検体からどこまで
判断できるか?

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 堀家 敬司、武田 朝美、小野田 浩、古宮 俊幸、坂井 薫、
北村 謙、山本 慶子、及川 理、
長坂 隆治、後藤 憲彦、
平光 高久、島袋 修一、鈴木 啓介、佐藤 哲彦、渡井 至彦、
打田 和治、両角 國男

 症例は57歳男性。2008年2月、小脳梗塞からのCPAで救急搬送入院し急性水頭症に対し脳室ドレナージが施行されて脳外科フォローとなった。MRSA肺炎併発し呼吸器管理・気管切開施行され、脳室ドレナージ閉塞にてVPシャント術施行された。入院後1か月半が経過してMRSAによるVPシャント感染・髄膜炎を起こし、VPシャントを抜去した。その1週間後早朝にCPA状態で発見され蘇生されるも低酸素脳症から脳死状態となった。妻よりドナーカードの提示があって全身感染症治療を継続して脳死下臓器提供の予定となった。入院時Cre値は0.70mg/dlだったが、2回目CPA後には尿量は維持されていたものの腎機能はCre=2.76mg/dlと悪化がみられていた。最終データでは、検尿で蛋白(+)0.6g/day潜血(+)糖(-)、Cre=8.15mg/dl、BUN=75.9mg/dl、CRP=12.91mg/dl、WBC=6200、Plt=3.0x104だった。
 灌流摘出後に両腎の針生検を行い、ゲフリール検体を作成して腎障害の有無を検討した。糸球体や細動脈・PTCに血栓形成はなく、尿路感染を疑わせる所見なく、動脈内膜の軽度肥厚と細動脈hyalinosisを認めた。両腎ともに移植術が施行され、現在まで良好に機能している。
 後日蛍光抗体法をチェックするとともに、同検体をホルマリン固定して薄切し光顕染色切片を作成した。糸球体係蹄内に血栓・好中球や単核球の集積なく、メサンギウム増殖性変化や明らかなdepositsは認めなかった。間質はびまん性に軽度の浮腫と線維化がひろがり、形質細胞浸潤が目立ち血管周囲には単核球浸潤も認めた。尿細管腔内に好中球集積はなく、尿細管炎なくPTC腔内に血栓形成や好中球集積はなかった。尿細管上皮の平低化がひろく存在し、巣状に萎縮尿細管や上皮細胞の膨化・脱落を認めた。血管では小葉間動脈で軽度のelastosisと細動脈hyalinosisをひろく認めた。IFでC3のみメサンギウムから係蹄に強く顆粒状に陽性を認めた。
 ゲフリール検体の所見でどこまで移植後の機能発現の有無を判断できるかは難しい問題である。臨床情報と照らし合わせて同一検体のゲフリールとホルマリン固定切片との比較し検討したい。

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