移植後に再発したループス腎炎が寛解後に組織型が変化した一例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 崔 啓子、清水 朋一、白川 浩希、石田 英樹、田邉 一成
東京慈恵会医科大学付属柏病院 病理部
山口 裕

【症例】32歳女性。1990年(13歳)、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断。1994年、ループス腎炎による慢性腎不全のため腹膜透析開始、翌年血液透析に移行。1998年(20歳)、母親をドナーとして生体腎移植施行(A→A,HLA 2ミスマッチ)。免疫抑制剤はメチルプレドニゾロン(MP)、ミゾリビン(MZ)、タクロリムス(FK506)を使用。術後経過良好であり、血清クレアチニン値(Scr)0.7mg/dl、尿蛋白陰性で経過していたが、2003年4月より蛋白尿出現(2.2g/day)。Scr 0.8mg/dl。移植腎生検でループス腎炎再発(2003年ISN/RPS分類Ⅴ+Ⅲ(A))と診断(光顕:係蹄壁のスパイク形成、メサンギウム基質増加、メサンギウム細胞増生)。二重膜濾過血漿交換(DFPP)2回行い、MZをミコフェノール酸モフェチル(MMF)に変更、約半年後に蛋白尿が消失した。Scr 0.8mg/dl。2007年11月、プロトコール生検施行。再発ループス腎炎の組織型の移行(Ⅴ型)を認めた(光顕:係蹄壁肥厚、スパイク形成)。その後も現在まで腎機能良好、尿所見異常なく経過している。
【考察】腎移植後のループス腎炎再発の頻度は他の糸球体腎炎と比較し少ないといわれている。またWHO分類、ISN/RPS組織型は、臨床症状の悪化とともに、より軽症から重症への移行が報告されている。本症例は移植5年後にⅤ+Ⅲ(A)型を再発し、DFPPおよびMMFによりタンパク尿消失、生検でⅤ型へ移行した。治療がメサンギウムの増殖性変化に有効であった可能性がある。

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