ABO不適合生体腎移植後、抗体関連拒絶を呈したEpstein症候群の1例

国立成育医療センター 腎臓科
* 小椋 雅夫、亀井 宏一、伊藤 秀一
武蔵野赤十字病院 小児科
菊池 絵梨子
神戸大学大学院医学研究科 小児科学講座
貝藤 裕史
国立成育医療センター 病理診断科
松岡 健太郎

 Epstein症候群は、遺伝性腎炎・感音性難聴・巨大血小板減少性血小板減少症を3徴とする常染色体優性遺伝の疾患で、腎移植の報告は少ない。今回我々は本症候群の男性に対しABO不適合生体腎移植を施行したので報告する。
 2歳時に0.3万/μlの巨大血小板性血小板減少を認め、7歳で本症候群と診断された。以後腎機能は徐々に悪化し18歳で血液透析導入となった。
 20歳時に母をドナーとした生体腎移植を行った。ドナーA( )型、レシピエントO( )型のABO不適合移植のため、術前管理としてリツキシマブ投与、DFPP・血漿交換、γグロブリン投与を行った。抗A抗体は64倍から移植前には2倍未満まで低下した。免疫抑制薬は、タクロリムス、メチルプレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチルおよびバシリキシマブを使用した。移植後、乏尿及び血清Cr高値が持続した。腎生検を施行し組織学的には明らかな拒絶の所見はなかったが、Crの上昇・尿量の減少があり、抗A抗体が上昇していることから抗体関連拒絶を疑い、治療としてステロイドパルス療法、血漿交換、γグロブリン投与を行った。その後も臨床的に改善を認めず抗A抗体の上昇を抑えることができなかったため、脾臓摘出術を施行した。その後、尿量増加し腎機能も改善傾向となった。
 術後25日で後腹膜出血を起こし移植腎の血流低下を認めた。緊急開腹術にて血腫除去を行ったが、その後急性尿細管壊死による無尿となり、利尿まで3週間を要し、この間出血予防のため定期的な血小板の補充を行った。本疾患は、血小板の数的及び機能的な障害があり、移植時には血小板数を確保するために十分な輸血が必要であると思われた。
【検討課題】組織学的に明らかな所見を認めなかったが、脾臓摘出術が奏功したという臨床経過から抗体関連拒絶と考えた。脾臓摘出術まで腎生検を合計3回行ったが、組織学的所見から抗体関連拒絶の存在に確信が持てず治療の決定に時間を要した。病理組織学的な検討をお願いしたい。


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