抗DQ抗体に伴った抗体関連型拒絶の4例

北海道大学病院 泌尿器科
* 三浦 正義、下田 直彦、福澤 信之、田邉 起、、野々村 克也
北海道大学病院 病理部
久保田 佳奈子、松野 吉宏

【症例1】IgA腎症による末期腎不全で22歳時に母をドナーとして生体腎移植。タクロリムス(TAC)、ミコフェノール酸モフェティル(MMF)、バジリキシマブ(BSX)で導入した。移植後3年目にノンコンプライアンスに伴い血清 クレアチニン値(sCr)1.1mg/dlで変化はないものの尿所見の異常を伴い、半月体形成を伴うIgA腎症の再発と、傍尿細管毛細血管炎(PTC炎)、PTCへのC4d沈着があり抗体関連型拒絶(AMR)が疑われた。ステロイドの導入で尿所見は軽快したが、4年目にはCDCクロスマッチ(CDCXM)陰性、フロークロスマッチ(FXM)陽性、FlowPRAクラスⅡ陽性、抗ドナーDQ抗体が証明され、腎生検では、ptc2、c4d2を呈し、そして依然として半月体形成を認め、再発性IgA腎症とAMRに対し扁摘、ステロイドパルス(MPP)、リツキシマブ(RIT)投与、血漿交換を行った。
【症例2】Drash症候群による末期腎不全で8歳時に母をドナーとして生体腎移植。TAC、ミゾリビン(Miz)の2剤で維持中の8年目の腎生検でcg1となり、尿蛋白は陽性だがsCr 1.1mg/dlで変化ないものの、10年目の生検でC4d3、CDCXMでB warm、B cold陽性、FlowPRAクラスⅡ陽性、抗ドナーDQ抗体が陽性となり、AMRとしてMizをMMFに変更した。
【症例3】先天性腎尿路奇形(CAKUT)による末期腎不全に対し、母をドナーとして3歳時に生体腎移植。BSX、TAC、MMF、ステロイドで導入。移植後3年目にsCr 0.6mg/dl、尿蛋白陰性だったものの腎生検でPTCのC4d沈着が軽度見られた。4年目にはcg1、g3、ptc2、c4d3が見られ、CDCXMでB warm、B cold陽性、FXM陽性、FlowPRAクラスⅡ陽性、抗ドナーDQ抗体陽性となり、AMRとして、MPP、RIT投与、血漿交換を行った。全例現在治療後の経過観察中である。
【症例4】CAKUTによる末期腎不全で2歳時に母をドナーとして生体腎移植を行い、BSX、TAC、MMFで導入した。3年目の腎生検でcg1とc4d1、4年目でsCr 0.4mg/dl、尿蛋白陰性だが、c4d3と悪化した。CDCXM陰性、FXM陰性、FlowPRAクラスⅡ陽性、抗ドナーDQ抗体陽性であったが、ptc0であったので、MMF増量にて経過観察中である。抗DQ抗体が原因と考えられるAMR4症例を報告した。

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