死体腎移植後にクリオグロブリン腎症の再発を認めた症例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 武田 朝美、大塚 康洋、鈴木 大成、山内 友香子、辻田 誠、
堀家 敬司、及川 理、後藤 憲彦、長坂 隆治、渡井 至彦、
打田 和治、両角 國男

 症例は60歳男性。既往歴として30歳頃血小板減少性紫斑病、32歳頃検尿異常で鈴鹿市の病院で腎生検施行された。詳細は不明だがクリオグロブリン腎症の診断を受け、名古屋市の病院へ転院してステロイドおよび免疫抑制剤の治療を受けた。治療に反応せず腎機能は徐々に悪化し45歳時に血液透析へ導入された。透析導入まで少量ステロイドを続けていた。HCV(-)、HBV(-)、肝障害は認めていなかった。
 1998年50歳時に死体腎移植術を受けて当院での移植後のフォローを開始した。免疫抑制剤は、シクロスポリン、プレドニゾロン、MMFが使用された。急性拒絶反応は経験せず順調に経過していた。2002年に発熱と下肢浮腫・紫斑が出現した。紫斑は自然軽快したがクリオグロブリン定性で弱陽性、移植後から低補体血症が持続し検尿所見も悪化しており確定診断目的で移植腎生検を施行した。巣状の病変として糸球体は腫大し分葉化を認め増殖性病変、単球・好中球の管内浸潤、小半月体形成も伴った。蛍光抗体法ではC3が優位にメサンギウムから係蹄に陽性でIgG、IgMも軽度陽性だった。腎機能低下はなかったが再発性クリオグロブリン腎症と診断してステロイドパルス療法を行った。低補体血症、RF高値は持続していた。
 2008年1月にA群β溶連菌による蜂窩織炎・敗血症にてICU管理を要したが回復し、移植腎機能低下と蛋白尿増加のため移植腎生検を施行した。クリオグロブリン腎症再発に対してDFPPとパルス療法を行った。その後は呼吸器感染症を繰り返し免疫抑制療法に難渋したが、高度な蛋白尿でネフローゼ状態が続き8月に3回目の移植腎生検を施行した(図1、図2、図3)。血管炎を伴う高度なクリオグロブリン腎症であり、治療としてはエンドキサンパルスを選択した。残念ながら感染症と心不全管理が困難となり、4 ヵ月後にHD再導入となった。
 本態性クリオグロブリン腎症の移植後再発症例を提示し、その臨床像および病理像について検討したい。


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