維持透析困難な壊疽性膿皮症に対する生体腎移植術後に発症したplasma cell rich rejectionの一例

社会保険中京病院 腎・透析科
* 堀江 勝智、西尾 文利、渡邊 達昭、野田 万理、加納 康子、
葛谷 明彦、佐藤 元美、露木 幹人

 症例は41歳女性。平成18年2月、1型糖尿病による糖尿病性腎症に由来する末期腎不全にて透析導入となった。数回の穿刺でシャント部皮膚に難治性皮膚潰瘍を形成し、皮膚潰瘍の生検結果、臨床所見、経過等から壊疽性膿皮症を診断され、ステロイドによる皮膚病変のコントロールを開始した。皮膚病変のコントロールがついたところで再度内シャントを作成したが、穿刺部位の発赤が生じ使用を断念した。長期留置型の透析用カテーテルを、留置部位を代えながら透析を続けていたが、カテーテル留置部の静脈の狭小化が見られ穿刺困難となった。長期透析は困難と考えられ、本症例において腎移植は準緊急に行うべき救命目的の手術であると判断した。壊疽性膿皮症を有する腎移植例の報告はなく、移植後の致命的な合併症を必ず回避できる保証はないことが問題点であったが、壊疽性膿皮症の治療にステロイドが第一選択薬とされ、他にシクロスポリンやタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルなどの使用が報告されていることや肝移植が2例、大動脈置換術が1例報告されていたことより、移植可能と判断し、当院倫理委員会の承認を得た後、2008年1月、血液型一致の69歳の母をドナーとして生体腎移植を施行した。免疫抑制剤は壊疽性膿皮症に対する第一選択薬としてステロイドが推奨されていることより、通常の当院の血液型一致の免疫抑制プロトコールに、Day0-2でメチルプレドニゾロン(500mg/day)のボーラス投与を追加した。術後経過は良好で、壊疽性膿皮症に伴うと思われる発熱や炎症反応の上昇潰瘍形成などのトラブルは見られなかった。術後腎機能良好であったが、12月外来受診時s-Cr値の上昇(0.85→3.27mg/dl)と上昇があり、12月24日移植腎生検を施行した。病理組織学的に間質に高度形質細胞浸潤を伴うBanff分類acute T cell-mediated rejection, Type IBを呈した。治療としてステロイドパルス療法を施行した。ステロイドパルス療法後の生検では拒絶反応は軽減していたがやはりplasma cell rich rejectionの像であった。現在s-Cr1.5mg/dl前後で移植腎機能は推移している。
 今回壊疽性膿皮症を合併する生体腎移植術後にplasma cell rich rejectionを発症した一例について文献的考察を加えて報告する。


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