急性抗体関連型拒絶反応をきたしBKウイルス腎症を合併した二次移植の1例

金沢医科大学 腎機能治療学
* 渥美 浩克、近澤 芳寛、木村 庄吾、井村 淳子、中川 卓、
奥山 宏、山谷 秀喜、浅香 充宏、横山 仁

 症例は40歳、女性。IgA腎症による末期腎不全で17歳時に血液透析導入となり、18歳時に父親をドナーとする生体腎移植術が施行された。血清クレアチニン値(sCr)1.2mg/dLで退院したが、退院後計6回の急性拒絶反応がみられ、移植後2年6 ヶ月で血液透析再導入となった。今回、脳出血で死亡した60歳男性をドナーとする死体腎移植術が当院で施行された。術前のクロスマッチ(AHG-LCT)は陰性であり、HLAはAB 1 mismatch、DR 1 mismatchであった。免疫抑制剤はメチルプレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリン、およびバシリキシマブの4剤で開始されたが利尿が得られず、術後19日目に移植腎生検を施行した。組織学的に傍尿細管毛細血管炎(PTCitis、ptc 3)(図1)、血管内膜炎を認め、PTC-C4dはdiffuseに陽性であった(図2)。またSV40陽性の尿細管上皮細胞も観察された(図3)。抗ドナーHLA classⅠ抗体が陽性であったことから、急性抗体関連型拒絶反応(AMR)typeⅡとBKウイルス腎症(BKVN)と診断した。計3回の血漿交換とγグロブリン製剤の投与を行い、尿量は増加傾向にあったが透析から離脱するには至らず、術後36日目に再度移植腎生検を施行した。組織学的にはPTCitisは改善し(ptc 2)、PTC-C4dも陰性化(focal minimal)していたが、動脈内膜炎の所見は持続していた。ステロイドパルス療法とγグロブリン製剤の投与を行い、以後sCrは次第に低下。術後44日目に血液透析から離脱し、sCr 3.3mg/dLで退院となった。AMRとBKVNを発症したが、移植腎の生着をみた貴重な症例と考え報告する。


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