腎移植後妊娠を契機に血栓性血小板減少性紫斑病を発症した1例

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 岩見 大基、原田 浩、平野 哲夫
市立札幌病院 泌尿器科
関 利盛、富樫 正樹
北海道大学 腎泌尿器外科
三浦 正義

 症例は32歳女性、原疾患は半月板形成性糸球体腎炎で透析歴は9年。母をドナーとして生体腎移植を行った。血液型不適合のため前処置として4回の血漿交換を施行しリツキシマブを投与、移植時に脾臓を摘出した。免疫抑制 導入はタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メチルプレドニゾロンの3剤に加えバシリキシマブを使用した。移植後1 ヶ月に原因不明の大腸潰瘍、3 ヶ月にCMV初感染を誘因とする急性拒絶を発症しステロイドパルスを施行したほかはSCr1.5前後でおおむね安定した経過をとっていた。本人の強い挙児希望があり移植後1年6 ヶ月よりMMFをAZAに変更した。移植後3年10 ヶ月で妊娠が判明したが(妊娠9週)、その後徐々にSCrの上昇が続き妊娠20週(移植後4年)より血液透析再導入。同時期より著明な溶血性貧血と血小板減少を認め、ADAMTS-13の低値、移植腎生検のthrombotic microangiopathy(TMA)の所見から血栓性血小板減少性紫斑病と診断した。血液透析に加え血漿交換とステロイドパルスを開始したが羊水過少、子宮内胎児発達不全が進行、妊娠24週で帝王切開。その後貧血および血小板数は改善し(児は出生時体重295gで生後5日で死亡)、現在維持血液透析を行っている。


戻 る  ページの先頭