1次移植、2次移植ともABO血液型不適合移植を行った生体腎移植1例の組織学的検討

京都府立医科大学大学院研究科 移植・再生外科学
* 牛込 秀隆、越野 勝博、昇 修治、松山 昌秀、
岡島 英明、岡本 雅彦、吉村 了勇
京都府立医科大学大学院研究科 臓器応答探索医学講座
松山 昌秀、岡本 雅彦、吉村 了勇
京都府立医科大学大学院研究科 計量診断病理学部門
益沢 尚子、浦崎 晃司

【はじめに】今回、1次移植のABO血液型不適合生体腎移植時に感作をうけず、2次移植もABO血液型不適合生体腎移植を行った症例を組織学的に検討した。
【患者と経過】患者は52歳男性。38歳時に慢性糸球体腎炎にて透析歴9ヶ月で母親をドナーとするA型からO型へのABO血液型不適合生体腎移植を施行した。脱感作療法に脾摘を行った。移植後順調に経過していたが、移植後9年よりSCr 3mg/dl以上に上昇し、腎生検施行した。硝子化した糸球体、細動脈内腔にPAS陽性の中膜の変性、内膜の肥厚、狭窄と一部閉塞を認めた。間質には縞状に尿細管の萎縮、線維化を認めたが、糸球体基底膜の二重化病変はなくC4d陰性であり、慢性移植腎障害と診断した。CNIを漸減して増悪は緩徐であったが、徐々に移植腎機能は低下して1次移植後14年で弟をドナーとするA型からO型へのABO血液型不適合移植を行った。前記の組織診をふまえ、抗血液型抗体が2倍程、リンパ球クロスマッチテスト陰性であったので術前血漿交換は施行しなかった。現在移植後8ヶ月、CsA50mg/dayでSCr0.9mg/dl、移植後プロトコル生検で拒絶反応や腎障害を認めず順調に経過しており、免疫不応答の可能性も考えられた。
【まとめ】同一家族ドナーで生体2次移植を行う場合、1次移植時に感作されて2次移植前リンパ球クロスマッチテストが陽性となる可能性がある。またABO血液型不適合移植後は慢性活動性抗体関連型拒絶反応を発症しやすいという報告もあり、液性拒絶に注意する必要がある。今回は組織診を含め2次移植前検査で1次移植によるドナーHLAおよび血液型抗原に対する感作の可能性は少なく、免疫不応答の可能性も示唆された。

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