本邦で最も長い移植後38年の長期生着症例の腎生検像
−特に新生神経に着目して−

兵庫県立西宮病院 病理診断科
* 岡 一雅
山口病理組織研究所
山口 裕
桜橋医誠会クリニック
京 昌弘
大阪大学 先端移植基盤医療学
高原 史郎

【背景および目的】移植腎は除神経単腎という特殊な状況であるが、最近の心移植ではinnervationが話題になり、移植心機能との関わりが議論されている。移植腎での神経の再生の有無に関しての報告は少なく、近年、除神経により糸球体腎炎の炎症の程度が抑制されたとの報告もある。今回、移植後38年の長期生着症例の腎生検を経験したので、その組織像に関して新生神経にも着目して報告する。
【症例】72歳男性。原疾患不明。1972年8月に妹をドナーとして生体腎移植(HLA-identical)を受けた。以後、腎機能は比較的安定していたが、2010年2月Creが1.4から2.3と上昇。ステロイドパルス治療を行い、移植腎生検を施行した。生検時、血圧134/86 mmHg、尿蛋白(/−)、内服薬:プレドニン 5/2.5mg/隔日、ミゾリビン 25mg/day、アザチオプリン50mg/day、カルベジロール(ア−チストR)40mg/day、コランチル3g/day、ベンズ ブロマロン(ユリノームR)50mg/day。組織学的には糸球体は18個で、荒廃糸球体3個。糸球体はいずれにも虚脱 傾向を示していた。細動脈の硝子化を認めたが、明らかな拒絶反応の像は確認できなかった。蛍光抗体法:IgG(+)、 IgA(+)、IgM(+)、C3(+)、C4(−)。Tyrosine hydroxylase免疫染色にて、血管周囲に神経新生と思われる陽性像を認めた。Creの推移は、ステロイドパルス治療後一時的に1.7に低下したが、2010年3月時点で2.1と再上昇している。
【結語】腎移植後38年の長期生着例で、新生神経を確認した。


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