BKウイルス腎症と急性細胞性拒絶反応により移植腎機能喪失となった1例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 田邉 起、清水 朋一、崔 啓子、宮内 勇貴、
白川 浩希、石田 英樹、田邉 一成
聖マリアンナ医科大学 病理部
小池 淳樹
東京女子医科大学 第二病理
本田 一穂
山口病理組織研究所
山口 裕

 症例は54歳男性、原疾患不明の慢性腎不全で1988年(34歳)に血液透析を導入。2008年1月29日に57歳の妻 をドナーに生体腎移植を施行。血液型適合、HLA6/6mismatch、抗ドナー抗体陰性。導入免疫抑制はtacrolimus、mycophenolate mofetil、methilprednisolone、basiliximabの4剤を用い、周術期に大きな問題なく術後2週間で退院した。同年6月にsCrが1.5→2.4mg/dlに上昇したためにステロイドパルス療法500mgを2日間投与後に腎生検を施行したところ、尿細管上皮に種大、濃染した核が散見され所々にスリガラス状の核内封入体を認め、SV40 染色が陽性でBKウイルス腎症(BKVN)と診断した。またBKV-PCRは尿中で>5.0×107、血清で3.2×104 を検出し た。免疫抑制剤を減量し、γ グロブリン投与を行ったがsCrは5.37mg/dlまで上昇したため再生検を行ったところ 皮質全体に形質細胞、リンパ球を主体として好中球も含んだ高度な炎症細胞浸潤を認め軽度の動脈内皮炎も伴っていた。高度の急性細胞性拒絶反応とBKVNの残存の診断でステロイドパルス2日間とrituximab500mgによる治療を行い、BKVNに対してはcidofovir0.25mg/kg週1回の投与を開始した。その後CMVアンチゲミアも陽性となりganciclovirの投与が開始された。再生検で拒絶反応の改善はなくOKT3を3日間とγ グロブリン投与を行い同年9月にsCr3前後で退院となった。退院前の生検結果で中等度の尿細管炎、間質炎が残存しており外来的にステロイ ドパルス療法が行われた。月2回のcidofovirの治療が継続されBKV-PCRは漸減傾向であったが、sCrは4 〜 5mg/dl と徐々に上昇を認めた。cidofovir投与開始から10カ月後の2009年5月の腎生検でもSV40染色陽性でBKV-PCRは血中で7.0×102 認めていたため、週1回の投与に増量したが、移植腎機能は悪化傾向をたどり2010年2月(移植から2年1カ月)に血液透析再導入となった。BKウイルス腎症に高度の細胞性拒絶反応を合併し移植腎機能喪失に至った1例を経験したので報告する。


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