BKウイルス腎症とAMRの合併が疑われ、診断に苦慮した一例

新潟大学医学部 第2内科
* 伊藤 由美、今井 直史、吉田 一浩、成田 一衛
神戸大学医学部 腎臓内科学分野
西 慎一
新潟大学医学部 泌尿器科
中川 由紀、齋藤 和英、高橋 公太

 症例は35歳男性。IgA腎症による末期腎不全で、1996年に血液透析導入。2009年1月に献腎移植術を施行した。 免疫抑制はCsA、mPSL、MMF、BXMの4剤で導入。術後、拒絶反応はみられず、1か月後のプロトコールバイオプシー では、minor glomerular abnormalityと診断され(fig.1)、外来でf/uされていた。S-Creは1.26mg/dl前後で安定し ていたが、徐々に上昇し、2009年4月、S-Cre 1.90mg/dlとなり、尿細胞診にてdecoy cellを多数認め、PCR法にて血中BKウイルスが陽性であったため、BK virus腎症が疑われた。MMFを1000mgから500mgへ減量し、再入院のうえ、移植腎生検を施行した。広汎な間質への炎症細胞浸潤と尿細管炎、およびperitubular capillaritisを認めた(fig.3)。免疫染色ではSV40陽性のBK virus感染細胞を認め(fig.4)、PTC壁にはC4dがdiffuseに沈着していた。 AMR type-IIと、BK virus 腎症の混在が疑われ、拒絶に対してはmPSLセミパルス療法を行い、BK virus 腎症に対しては、MMFを中止するとともに、rグロブリン製剤の投与を行った。S-Creは1.25mg/dlまで低下し、2009年6月の再生検では、BK virus 感染細胞はほぼ消失し、間質の炎症細胞浸潤と尿細管炎も改善していた(fig.5)。移植後BK virus腎症は2 〜 3%の頻度でみられ、移植腎機能廃絶に至り得る重要な移植後合併症である。診断時期は平均移植後12ヶ月とされるが、この症例では、プロトコールバイオプシーをふりかえって見直してみると、移植後1カ月ですでにSV40弱陽性尿細管上皮細胞が皮質部にみられていた(fig.2)。発症も移植後3カ月と比較的早期であり、拒絶反応による間質尿細管炎との鑑別が困難であったが、治療が奏功し、移植腎機能を温存する事ができた貴重な一例と考え、報告する。


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