ABO不適合移植後に溶血性尿毒素症候群を併発し移植腎の温存が可能であった1例

市立札幌病院 腎移植科
* 原田 浩、大橋 伸生、平野 哲夫
市立札幌病院 泌尿器科
関 利盛、富樫 正樹、丸山 覚、藤田 信司

 症例は28歳男性、IgA腎症による慢性腎不全にて10か月の血液透析を経て、2000年5月ABO不適合生体腎移植 を施行した(ドナー:60歳父親、B→A)。初期免疫抑制はTAC、AZ、PD、ALGの4剤で行い、術前4回の血漿交換にて抗B抗体価はIgG 32、IgM 8倍であった。2本の腎動脈に対し内腸骨動脈グラフトを用いた血管再建を行い総阻血時間は152分であった。血流再開数分後にグラフトは一時軟化したが、immediate functionは得られた。Onehour biopsyの凍結迅速病理診断にて、いわゆるhyperacute rejectionの所見は証明されなかった。翌日より血小板の著明な減少(最低値0.3x104/mm3)、破砕赤血球の出現および著明な貧血(最低値81x104/mm3)、出血傾向、黄疸が認められ、尿量は次第に減少した。手術当日の抗B抗体価はIgG 128、IgM 16倍であった。液性拒絶反応による溶血性尿毒素症候群(HUS)として6回の血漿交換(PEX)、血液透析およびnafamostat mesilateの投与、適宜血液製剤の補充を行い貧血、血小板減少は4日目に改善、17日目に腎機能は回復し22日目に血液透析を離脱した。 One-hour biopsyの免疫組織染色の結果TMAとして矛盾のない所見であった。HUS/TMAは頻度は少ないが、ABO 不適合移植の際にも起こりうる重篤な合併症であり、術前の十分な抗体除去が肝要である。


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