移植腎プロトコール生検におけるFK腎毒性の検討

戸田中央総合病院 腎センター
* 松田 明子、江泉 仁、杉 織江、井野 純、川島 洋一郎、早川 希、力石 浩介、野崎 大司、徳本 直彦、東間 紘
東京女子医科大学病院 泌尿器科
田邉 起、田邉 一成
山口病理組織研究所
山口 裕

【背景】免疫抑制剤の進歩、術前の減感作療法の進歩により移植腎の長期生着が得られている一方で、免疫学的要因以外での移植腎喪失のコントロールが重要視されている。その一つとしてCNI毒性も移植腎機能に少なからずの影響を与えていると考えられる。我々の施設において現在主に使用しているCNIはFK506であり、CyAに比し腎組織への毒性が少ないと考えられてきたが、それでも慢性のCNI毒性の所見はしばしば散見される。今回我々は移植後5年目のプロトコール生検を用いて、FKの慢性毒性の病理学的特徴を評価した。
【方法】2000年から2004年に生体腎移植を施行し、移植後5年以上でプロトコール腎生検を行った105例のうち、腎炎の再発、拒絶反応を認めた症例を除外し、ah>2以上の細動脈病変を認めた26例において、0時間生検との比較を行った。評価項目は細動脈病変としてah(細動脈硝子様肥厚)、aah、小葉間動脈病変としてAS(小葉間動脈の内膜肥厚)、間質評価としてIF/TA、Medullary Ray injuryの程度、糸球体病変として非可逆的な糸球体硬化(GS/glomeruli)、虚脱(collapse/glomeruli)をスコア化して比較した。
【結果】各スコアーはAS(1.18→1.68)、ah(0.56→2.75)、aah(0→2.12)、IF/TA(0.31→1.06) Medullary ray injyury(0.06→0.66)、GS/glome(0.11→0.31)、collapse/glome(0.02→0.16)であった。
【考察】FK慢性腎障害の特徴である細動脈病変の進行が見られ、移植腎に虚血性変化をもたらし、糸球体の非可逆的な硬化、虚脱と尿細管間間質変化の進展を認め、移植腎機能喪失に結びつく病理学的変化をもたらす可能性が示唆された。

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