移植腎動脈分枝狭窄による腎血管性高血圧・ネフローゼ症候群の1例

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 岩見 大基、堀田 記世彦、平野 哲夫、原田 浩
市立札幌病院 泌尿器科
関 利盛、富樫 正樹

 症例は60歳男性。IgA腎症による慢性腎不全にて7年の透析を経て中国にて渡航移植を施行され即座に帰国し た(TAC/MMF/MPによる免疫抑制)。直後の移植腎機能は良好であった(sCr0.9mg/dl、尿蛋白陰性)が、移植3ヶ月後、高血圧に対してARBを処方したところ尿量が激減し浮腫およびsCrの上昇がみられた(1.5mg/dl)。造影CTから腎動脈狭窄(RAS)を疑い、DSAを施行した。腎動脈は吻合部近傍で2本の分枝となっており、2本とも有意に狭窄していた。 特に下極枝の狭窄が高度であったので下極枝に対してPTAを施行した。拡張は完全ではなかったが血圧および移植腎機能は改善した。しかし移植9ヶ月後から6g/日を越える蛋白尿が出現し、低タンパク血症、脂質代謝異常も見られネフローゼ状態となった。上下両極より移植腎生検を行ったが、血流不良である下極では虚血による萎縮性変化を認め、血流比較的良好な上極ではFSGS様変化が認められるという興味深い知見が得られた。FSGS様変化についてはその病理所見から原発性よりも2次性変化が疑われ、腎血管性高血圧によるhyperfi ltrationが原因と考えられた。RASの残存/再発に対して再度PTAを行ったところ、蛋白尿は1-2g/日にまで改善し、sCrも0.9mg/dlと前値に復した。本症例は同一腎に異なる病理像を認めた貴重な症例であり、文献的考察を含め報告する。

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