1時間目生検においてTMAを認めた1例

岐阜大学医学部 泌尿器科
* 伊藤 慎一、石田 健一郎、土屋 朋大、出口 隆
聖マリアンナ医科大学 診断病理学
小池 淳樹

 症例は64歳男性。原疾患は不明であるが56歳時透析導入となった。2010年6月妻をドナーとした生体腎移植術を施行した(B→AB型適合、HLA 4 mismatch)。ドナーの手術は腹腔鏡下に施行され、手術開始から腎摘出まで192分で、腎血管切離前には全身ヘパリン化を行い、腎摘出後速やかに腎潅流を行ったが色調も含め明らかな潅流不良は認められなかった。レシピエントの外腸骨動静脈に移植腎の血管吻合を行い血流再開したものの尿流出は得られなかった。術後、拒絶反応もしくはATNを念頭に透析を継続しながら治療を行った。1hr生検にて TMAおよび中等度のATNを認めた。大多数の糸球体にフィブリン血栓が形成され、高度な抗体関連型拒絶反応の像に似るものの、傍尿細管毛細血管炎、糸球体炎、動脈内皮炎などの組織障害は明らかではなくC4dも陰性でありAMRとの診断には至らなかった。臨床的にはAMRと考え治療を継続した。9PODに移植腎生検を施行したところ、TMAを認めたが、1hr生検時に比べるとATNなどのTMAに伴う組織障害の程度に改善が見られた。また、び まん性の尿細管萎縮と間質の浮腫状拡大を認めた。その後、尿量が増加し19PODに透析離脱となり40PODにS-Cr 5.95mg/dlの状態で退院となった。その後3ヶ月目生検ではTMAの所見は消退したもののTMAによる糸球体傷害により多くの糸球体が虚脱傾向を示し、分節状硬化像も見られ、TMAによる尿細管間質傷害により中等度のIF/TA もみられた。移植後5ヶ月が経過した時点でS-Cr 3.5mg/dlと改善は認めるものの依然高度の腎機能障害を認めている。
 1hr生検の時点で既に赤血球そのものではなくフィブリン血栓が形成されていたことより、TMAによる組織傷害が起こってから一定の時間が経過していると考えられる。このことより我々は、ドナー手術時にすでに腎内に異常が起こりつつあったと推測している。

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