腎移植後15年以上経過した症例における移植腎生検の検討

市立札幌病院 泌尿器科
* 佐々木 元、高田 祐輔、今 雅史、石崎 淳司、高田 徳容、
関 利盛、富樫 正樹
市立札幌病院 腎臓移植外科
堀田 記世彦、和田 吉生、原田 浩
市立札幌病院 病理診断科
柳内 充、辻 隆裕、深澤 雄一郎

【背景と目的】免疫抑制剤の発展と医療診断技術の進歩により移植腎の長期生着例が増加している。この様な長期生着症例では、間質の線維化、尿細管の萎縮、糸球体荒廃などの慢性変化が問題であるが、長期生着症例の病理学的検討の報告は少ない。そこで15年以上の長期生着例における定期腎生検の組織像と臨床経過につき検討した。
【対象と方法】1985年2月から2001年4月までに当科で施行された腎移植188例中、移植後15年以上経過し腎生検を行った11症例、17検体を対象とした。生検時の年齢は中央値45.8(19-60)才、性別は男7/女4、ドナーは生体9/献腎2であった。血液型は、適合9/不一致2例で、HLA typingはfull match 3例/1mm 3例/2mm 1例/3mm 4例であった。原疾患はCGN 4例、IgA腎症3例、MPGN、紫斑病性腎炎、ADPKD、Alport症候群が1例ずつであった。血清クレアチニン値(sCr)は全例安定していた(0.8-1.9mg/dl)。プロトコール生検が15検体で、蛋白尿増加によるエピソード生検が2検体であった。生検時期は移植後平均(15-24年)であった。
【結果】急性期のスコアはi1を4例に認めたのみであった。HLA full match症例の3症例4検体はすべてプロトコール生検でありsCrはすべて1mg/dl以下で慢性変化は軽度であった(ci1:2、ct1:4、cv1:1、ah1:1、mm1:1)。 HLA mismatch症例は8症例13検体で、プロトコール生検11例、エピソード生検2例であった。慢性期スコアはそれぞれ(ci1:5、ci2:4)、(ct1:6、ct2:4)、(cg1:2)、(cv1:1)、(ah1:4、ah2:4、ah3:2)、(mm1:5、mm2:2)であり腎機能は安定していても、中等度の慢性変化を多く認めた。特にcg陽性の2症例は、ともに2年以内に移植腎機能廃絶となった。
【結語】HLA full match症例を除いては、腎機能が安定していても中等度の慢性変化は一定の割合で認められた。特にcg陽性例は早期に移植腎機能は廃絶し、予後を反映する因子である可能性が示唆された。


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