血液型不適合生体腎移植におけるくすぶり型抗体関連拒絶反応とPTCへの IgG沈着

戸田中央総合病院 腎センター
* 松田 明子、杉 織江、井野 純、江泉 仁人、川島 洋一郎、早川 希、
佐藤 康之、野崎 大司、瀬戸口 誠、徳本 直彦、東間 紘
東京女子医科大学病院 泌尿器科
田邉 達
山口病理組織研究所
山口 裕

 症例 22歳女性。原疾患慢性間質性腎炎にて2009年5月血液透析導入し、同年6月母親をドナーに抗血液型抗体32000倍と著明高値を呈する症例のB+→O 血液型不適合生体腎移植を施行した。術前11回の血漿交換を行い、 術直前の抗血液型抗体は32倍まで低下していた。当日の尿量は5000mlと旅行であったが術後2日目に尿量低下と抗血液型抗体価上昇を認め、拒絶反応を疑い、血漿交換とγグロブリン投与を行った。翌日には尿量は回復し、抗体価も256倍をピークにその後徐々に低下した。第13病日で行った最初の生検ではg1.ptc1であり、免疫染色(IF)でPTCへのC4d沈着をみとめ抗体関連拒絶反応(AMR)と診断したが、追加加療は行わず、経過観察の方針とした。その後45日、73日、160日、376日にフォローアップ生検を行った。光顕でのAMRの所見は73日目で一度消失したが、160日目以降再発しており、376日目にはptc基底膜の肥厚が出現し、慢性化が示唆される。フォローアップ期間を通じてIF所見ではC4dとIgGのPTCへの持続的沈着が認められる。術後2年経過した時点での腎機能は s-Cr1.5-1.8mg/dlで安定しているが、一方で持続するAMRの存在が疑われ、今後の腎機能の注意深いフォローアップが必要と考えられる。興味深いことに、移植後早期の腎生検のIFでIgAがptcに顆粒状に沈着する所見が認められた。移植腎生検におけるptcへの免疫グロブリン沈着の意義についての検討を行い、今回報告する。

戻 る  ページの先頭