CNIによるTMA・FSGSの疑いのある移植後4年の症例

東京大学医学部附属病院 腎臓内分泌内科
* 池田 洋一郎、広浜 大五郎、石橋 由孝、藤乗 嗣泰、藤田 敏郎
東京大学医学部附属病院 病理部
宇於崎 宏
東京大学医学部附属病院 腎疾患総合医療学講座
石川 晃

 腎生検にて確認された腎硬化症による末期腎不全で2006年にHD導入した60歳男性。2007年9月に妻をドナーとした生体腎移植施行。血液型一致、DSA陰性。BXM、mPSL、CsA、MMFにて周術期に拒絶なく、sCr 1.3mg/dl、尿蛋白 200mg/gCrで退院(退院直前 腎生検①)。以降、起床時血圧は130/80mmHg前後であった。2008/5(移植後8 ヶ月)にsCr 1.6mg/dLまで上昇。腎生検②にて拒絶の所見を認めなかったが、mPSLパルス施行し改善。このときから軽度のメサンギウム基質増加あり。2009/5(移植後1年半)で尿蛋白 2.0g/日に増加、腎生検③にて拒絶の所見を認めなかったが、glomerular segmental sclerosisおよびCAAあり。DSG投与、CsA→TACへの変更し、尿蛋白1.0g/日まで減少。2010/2(移植後2年半)で、海外にて感染性腸炎罹患後にsCr 4.3mg/dl、TACトラフ44ng/ mlに上昇。TAC調整によりsCr 1.8mg/dlまで改善。2010/5(その3ヶ月後)の腎生検④では、前回まで認めなかった縞状の高度尿細管脱落とリンパ球・形質細胞の浸潤、高度の糸球体硬化・高度のCAAを認めた。IFにてIgM・ C1q・C4がメサンギウム領域に陽性、C4dは陰性。2010/9頃(移植後3年)よりタンパク尿が増加し、約3ヶ月の経過で尿タンパク10g/日まで増加。2011/4(移植後3年半)に腎生検⑤を施行すると、前回の細胞浸潤の一部が線維化し、糸球体硬化が進行していた。IF所見は一貫して同じ。CNI減量と安静により尿タンパク減少し、sCr 2.5mg/ dLで安定しており、CNIによるTMA・移植後新規発症FSGSの疑いのある症例と考えている。


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