カルシニューリン阻害剤離脱症例の病理学的検討

北海道大学 泌尿器科
* 田邉 起、森田 研、広瀬 貴行、堀田 記世彦、野々村 克也
北海道大学病院 病理部
藤田 裕美、久保田 佳奈子
NPO法人北海道腎病理センター
小川 弥生

【背景】カルシニューリン阻害剤(CNI)は本邦の現在の腎移植臨床において第一選択の免疫抑制剤であるが、長期経過例には細動脈硝子化、間質線維化、尿細管萎縮など組織学的変化が起こり腎機能障害の原因となり得る。移植後安定症例でCNIを離脱した症例につき、その後の経過及び病理組織学的変化を検討した。

【対象】1988年から1998年の当院腎移植症例で移植腎機能が安定して、過去3年に拒絶反応がなく、患者の同意が得られた14例に対してCNI(cyclosporine 13例、tacrolimus 1例)を離脱した。男性6例、女性7例で、生体腎が11例、献腎が2例、移植後離脱までの期間は中央値87(42-202)ヶ月、離脱時年齢は中央値41(25-58)才、離脱時の 血清クレアチニン(sCr)値は中央値1.35(0.8-1.7)mg/dlであった。移植腎機能、病理所見を検討した。

【結果】離脱後の経過観察期間は中央値120(85-128)ヶ月であった。離脱が維持できている11例で最新のsCrは中央値1.1(0.7-1.6)mg/dlで、組織学的にはIF/TAはgrade1が7例、grade2が3例、grade3が1例で、細動脈硝子化の平均スコアはah0.60、aah0.57であった。一方、2例で腎機能廃絶しており、巣状糸球体硬化症再発例が離脱後5年で、原因不明の一例が8年で廃絶した。

【結語】症例によりCNI離脱は可能であるが、その適応には慎重な判断を要する。

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