移植後IgA腎症に対する扁桃摘出の有用性についての病理学的検討

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 堀田 記世彦、原田 浩
市立札幌病院 病理診断科
深澤 雄一郎、秋元 真祐子
市立札幌病院 泌尿器科
佐々木 元、関 利盛、富樫 正樹
北海道大学病院 泌尿器科
堀田 記世彦、田邊 起

【背景】IgA腎症は移植後腎炎の中で最も多い。扁桃摘出(扁摘)が施行されているが明らかな有効性は不明である。今回、扁摘後の病理学的変化について検討した。

【対象・方法】移植腎生検にてIgA腎症と診断され扁摘が施行された19症例。扁摘後、6ヶ月以降に腎生検を施行し治療効果を病理学的に検討した。

【結果】性別は男11例、女8例。原疾患はIgA腎症が11例でAlport症候群が1例、7例は腎生検を施行されておらず、いわゆる慢性糸球体腎炎であった。診断時のIgA腎症のH-gradeはそれぞれI:4例、I(A):2例、I(A/C):1例、I(C):4例、II(A/C):1例、II(C):5例、III(C):2例であった。扁摘後に中央値18ヶ月(5-57)で後に腎生検が施行されており、ステロイドパルス療法は13例に施行された。結果病理学的改善を認めたものは8例、不変が3例、進行した症例は8例であった(奏功率57%)。具体的には、メサンギウム細胞の増殖とメサンギウム領域へのIgAの沈着のみを認めたGrade Iの症例については2例がI(C)、2例がII(C)に慢性病変へと移行していた。細胞性半月体や線維細胞性半月体の形成を認める急性病変を有した4例については全例で急性病変は消失しており、1症例でGradeも改善していた。糸球体の分節性硬化、全節性硬化や繊維性半月体などの慢性病変のみを有したものが11症例であった。うち病変が改善したのは4症例で不変が3例、悪化を認めたものは4症例であった。ステロイドパルス療法の有無と病理学的変化には明らかな関係はなかった。臨床的には急性期病変の認めた1症例で血清クレアチニン(sCr)2.5mg/dlと上昇を認めたが治療後に1.52まで改善した。他の18例はsCrに大きな変化は認めなかった。蛋白尿については1g/gCr以上を認めた症例が3症例あり、全例蛋白尿は減少した。0.3g/gCr以上の症例は3例でこのうち2例でも蛋白尿は改善した。0.3g/gCr未満の13症例では2例で蛋白尿が倍増した。

【結語】移植後IgA腎症に対して扁桃摘出は有効症例が多く、治療の選択肢となると思われた。


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