移植後IgA腎症、クローン病が再発した生体腎移植の1例

藤田保健衛生大学 腎内科
* 長谷川 みどり、林 宏樹、湯澤 由紀夫
藤田保健衛生大学 腎泌尿器外科
佐々木 ひと美、白木 良一、星長 清隆
藤田保健衛生大学 臓器移植再生医学
日下 守

 症例は40歳男性。27歳の時に小腸大腸型クローン病、IgA腎症と診断され、クローン病は栄養療法、IgA腎症は保存的加療で経過観察されていた。31歳で血液透析導入され、透析導入4ヶ月後に母親をドナーとする生体腎移植術施行。術後最低 Cr1.4mg/dL。移植8ヶ月後より蛋白尿、血尿あり。1年後のプロトコール腎生検(Cr1.6mg/dL) で軽度巣状分節状壊死性糸球体腎炎の所見あり。IgA腎症再発と診断。34歳移植2年9ヶ月後扁桃炎を契機に尿所見が悪化してCr2.0mg/dLまで上昇したため腎生検施行。活動性病変を伴うびまん性中等度増殖性腎炎の所見を呈していた。感染症の改善に伴いCr1.52mg/dLに低下したが病巣性扁桃炎の可能性を考えて移植3年3ヶ月後に両側 口蓋扁桃摘出術施行。術後4ヶ月で蛋白尿は陰性化し以後蛋白尿陰性が持続。移植5年後発熱、下痢、下血あり。尿沈渣赤血球増加。消化管内視鏡で回腸不整形潰瘍、直腸を除く大腸全体にアフタ散在、不整形小潰瘍あり。活動性中等度と診断されて5−ASAが開始された。移植7年5か月後下血あり。インフリキシマブが開始され、現在尿 所見、消化管病変とも安定している。本症例は扁摘後尿所見が改善し、腎移植後再発IgA腎症の進展抑制効果があったと考えられる。クローン病の病勢悪化時にも尿所見が悪化しておりインフリキシマブの効果を含めて考案する。


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