移植後にネフローゼ症候群を発症、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の再発と診断した原疾患不明の献腎移植の一例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 平野 一、八木澤 隆史、野崎 大司、清水 朋一、尾本 和也、
石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学 第二病理
本田 一穂

【症例】1歳時発症の頻回再発ネフローゼ症候群(腎生検は未施行)に対し加療中、13歳時に抗生剤による薬剤性間質性腎炎を合併し、腎機能の急性増悪を認めた。原疾患の確定診断に至ることなく、14歳時に腹膜透析導入となり、その後腹膜炎により約3年で血液透析導入となった。今回、脳死下献腎移植施行。術後7日目の時点で腎機能改善なく、急性拒絶反応を疑いステロイドパルス療法を施行したが反応性に乏しかった。CTで移植腎周囲に全周性に血腫を認め、圧排による腎血流障害の遷延と考え血腫除去術を施行した。尿量は増加したものの、尿蛋白が10g/day以上となり、術後30日目に移植腎生 検施行。FSGSの糸球体所見を認めた。幼少時よりの病歴と併せて、再発腎炎と診断。血漿交換療法を開始。その後、腎機能改善し、術後48日目で透析離脱したものの完全寛解には至らなかった。術後52日目の移植腎生検では、collapsing variantの所見であった。

【考察】献腎移植レシピエントは登録の際、原疾患不明であることが多く、原疾患についての検討が慎重になされないまま手術施行となることがある。本症例では病歴把握が遅れ、FSGS再発の高リスク群にも関わらず、診断までに時間を要した。ネフローゼ症候群の病歴のある場合には、FSGSの再発の可能性を念頭におく必要もある。


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