著明なメサンギウム細胞増殖と管内細胞増多を認めた抗体関連型拒絶反応の一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎膠原病内科学分野
* 伊藤 由美、河野 恵美子、吉田 一浩、今井 直史、成田 一衛
新潟大学大学院医歯学総合研究科 腎泌尿器病態学分野
山崎 裕幸、中川 由紀、齋藤 和英、高橋 公太
新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児科病態学分野
唐澤 環、鈴木 俊明、池住 洋平、齋藤 昭彦

【症例】24歳女性。

【経過】13歳時に非IgA型のメサンギウム増殖性糸球体腎炎による慢性腎不全のため、母をドナーとする血液型一致の生体腎移植が行われた。CyA、MMF、MPの3剤で導入された。移植後1年頃に歯肉腫脹がみられ、CyAをFKに変更した。移植後6年目より尿蛋白が出現し、ARBの内服を開始した。一時尿蛋白は減少したが、移植後10年目より尿蛋白は再び増加し、高血圧症もみられたため、ARBを増量した。移植後11年目にカンピロバクター腸炎を契機に血清Cr値の上昇を認め入院。補液にて腎機能は改善したが、退院2か月後より尿蛋白はさらに増加し、血清Cr値も上昇したため、再入院し移植腎生検を行った。光顕では、糸球体にびまん性全節性のメサンギウム細胞増殖と単核球浸潤があり、一部でメサンギウム間入、メサンギウム融解像も認めた。また、びまん性全節性に糸球体係蹄壁の二重化および管内性細胞増多と係蹄狭小化を認めた。PAM-Masson trichrome染色では内皮下沈着物の存在が疑われた。動脈内膜炎はみられなかったが、高度の傍尿細管毛細血管炎を認めた。IFでは、糸球体係蹄壁にIgM、軽鎖が弱陽性、C4dは糸球体には全節性に線状に強陽性であったがPTCには沈着はみられなかった。電顕では、メサンギウム細胞増殖および内皮細胞の腫大と内皮下腔の開大がみられたが、沈着物はみられなかった。糸球体基底膜には多層化がみられたがPTC基底膜の多層化はみられなかった。FlowPRAにてclassII HLA-DR抗体が検出され、急性および慢性活動性抗体関連型拒絶反応と診断した。

【結語】急性および慢性抗体関連型拒絶反応の糸球体病変として、transplant glomerulitis, transplant glomerulopathyの所見は認めたが、PTC基底膜には多層化がみられず、PTCへのC4d沈着もみられない点で非典型的であった。メサンギウム細胞増殖が目立ち、MPGN、感染後腎炎などとの鑑別にも苦慮した。


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