抗ドナー抗体陽性献腎移植4年後に傍尿細管毛細管炎と尿細管石灰沈着が認められた一例

神戸大学医学部附属病院 腎・血液浄化センター
* 吉川 美喜子、後藤 俊介、西 慎一
神戸大学医学部附属病院 病理診断科
原 重雄
神戸大学医学部附属病院 腎泌尿器科
石村 武志、竹田 雅、藤澤 正人

【症例】50歳、男性

【既往歴】腎原病不明、37歳 二次性副甲状腺機能亢進症(2HPT)に対し副甲状腺摘出+自家移植術、C型肝炎ウイルス持続感染症【臨床経過】1975年(13歳)で血液透析導入、2008年4月(46歳)に献腎移植を受けた。術前に抗ドナー抗体(DSA)陽性を指摘され、術前にRituximabとMethy-prednisolone(mPSL)の投与、および血漿交換療法にて移植時にはFlow-PRAで抗体陰性状態であった。導入免疫抑制はBasiliximab、mPSL、Tacrolimus、Mycophenolate mofetilの4剤使用とし、術後の経過は良好であった。退院時のS-Crは1.67 mg/dLであり、以後4年間はS-Cr 1.5-1.9mg/dL程度で推移した。2011年3月のprotocol-biopsyでは糸球体、傍尿細管毛細血管(PTC)に変化はなく、尿細管炎の所見も認められなかったが、中等度の尿細管の萎縮、間質の線維化と尿細管腔への石灰沈着が認められた。しかし2011年11月にS-Cr 2.08mg/dL、2012年1月に2.5mg/dL、3月に3.13mg/dLと腎機能が増悪し、episode-biopsyが施行された。DSAの陽転化が認められ、腎生検では前回は認められなかったPTCの拡大や、好中球や単核球からなる炎症細胞浸潤(ptc1)、および尿細管上皮細胞の空胞変性や硝子滴沈着を指摘され、蛍光抗体法では尿細管基底膜(TBM)にびまん性C3, C4d陽性像が認められた。PTCにC4dの明らかな陽性像はみられなかった。また尿細管萎縮、間質線維化と、尿細管・間質への石灰沈着の増悪は増悪していた。経過中に高カルシウム血症、高カルシウム尿症は認められなかった。

【まとめ】DSA陽性症例の献腎移植の経過で、移植4年後に尿細管萎縮、間質線維化(IF/TA)が徐々に進行し、更にC4d陰性のPTCitis、尿細管石灰沈着所見が認められた。蛍光抗体法で観察されたTBMのびまん性C4d陽性所見はC4d陰性(PTC)抗体関連拒絶反応例の一亜型であるのか判断に迷った。また、石灰沈着の原因として薬剤副作用、2HPT、あるいは拒絶反応によるものの可能性が考えられた。本症の病態について文献的考察を加えて報告する。


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